「さあ皆!準備して〜!」
「準備って何ですか」
「詳しいことは気にしなくてOK!皆は座ってくれればいいのっ!」


皆が部室に居るのをいいことに、私は声をかけた。
全員が私に不信な目を向けているのは気にしちゃいけない。


「アーン?お前、何企んでんだよ」
「企んでるとは失礼な。一緒に遊ぼうと思って!」
「そうなん?なら、野球拳がええなー」
「変態の好みは聞いてねえ」
「桜花ちゃんひどいわ!」


変態に対してはあんな言葉遣いになります。


「……練習はしねえのかよ」
「まぁまぁ、今日くらいいいじゃない」


そう!
今日は特別なんだから!


「んで、何すんの?」
「ふっふっふ。これよ!仁王からもらったドリンクでロシアンルーレット!」
「「「はあ?」」」


皆が一斉にバカにしたような顔を私に向けた。


「皆、疑ってるわね?いい?これはただのドリンクじゃないの。立海の詐欺師、仁王雅治から送られたドリンクよ!!」


そうやって言うと、皆は黙る。
納得したかな?


「賞味期限とか切れてねえよな?」
「そう思いがちだけど違うのよ」


ちょっと失礼な会話。


「あとね、仁王からのメッセージもあるのよ〜」


私はドリンクと一緒にあったメモを読む。


「えーとね、

 『これは俺んとこで一回やったやつじゃ。
  最高のゲームやったのう…。
  まぁ、やってみれば分かる。
  勝つか負けるかの勝負ぜよ。
  ……クク、結果が楽しみじゃのう。

  PS 当たらんかったからって、ひがむなよ?』

……だって!」
「意味がわからねえ」


仁王は勝ち組なのかな?
それっぽい書き方……。


「何でわざわざ俺等に送ってくんだよ」
「当たらなかったらひがむようなゲームなんですか?」


チョタが不思議そうに聞いてきた。


「うーんとね、このドリンクの中に、ひとつだけ媚薬が入ってるみたい」
「「「マジか?」」」


わお、凄い反応。
男の子って怖い!


「なら是非桜花さん飲んでくださいね」
「さっきと態度違うことない?」


親切に内容教えてあげたのに。


「大丈夫やて。俺がちゃんと介抱したる!」
「嫌だ。裁判にかけるお金ないもん」
「裁判に持ち込むこと前提かい!」


だって……ねぇ?


「桜花さん」
「なぁに?若」
帰っていいですか?
「だめ。全員参加」
「げ」


宍戸まで嫌な顔をしたけど、貴方たちみたいな人がいるから楽しいんじゃない!


「よーし、俺飲むC〜!」
「うん、流石ジローちゃん!」


物分りのいい子だ!


「てことで、皆一気飲み!」


一人一人に渡して、言った通り一気飲みした。
宍戸と若は早く終わらせたいからだろうけど…。


「ぷはー!えっとね、即効性だからすぐに効くって!」
「それは楽しみですね」
「はいそこ、私を見ない」
「桜花やったらナニしよかな〜……」
妄想すんな





10分後。






「セェーフっ!私じゃないっ!」
「……っち。つまらない…」


うわー舌打ちしちゃったよこの子。
いつからそんな子に……。


「あ〜あ。桜花やないんか。残念やなぁ」


私じゃなかったことに誰でもいいから感謝したいです。
忍足の目を見てそう思いました。


「お、俺でもねぇ……」
「ん〜、俺も違うぜ」
「あら、がっくんと宍戸も違うの?……残念」
「何でだよ」


あ、聞こえちゃった?


「じゃあ、跡部は違う?」
「ふん、俺様がそんなのに当たるわけねえだろ」


あ、そうですか。


「折角跡部の弱み握ろうと思ったのに……」
「アーン?何か言ったよな?」


決定事項!?
謝るから殺気立てないでください。


「若は?」
「……違います」
「そーなの?……ちぇ」
「俺でもないよ〜?」
「ジローちゃんも?良かった!ジローちゃんは天使のままで」


……って待てよ?
じゃあ誰なのよっ!?


「えっ?誰も違うの?」
「誰も効果ないみてーだぜ?」
「媚薬とか入ってないんちゃうん?」
「えー。それはないと思うけど……」


だって、仁王がくれたんだよ?


「ペテンだったんじゃない〜?」
「嘘っ!だって…」
「じゃあ、少し皆静かにしたらどうですか?当たった人が居たらじっとしてられないはずですから」
「それもそうよね…。よし、皆シャーラップ!」


チョタの作戦にのることにした。





………





「……ぅ、」
「今っ、誰k「桜花さん、静かにしてください」……はい」


怖いです。
皆、怖さで何も喋らないんだと思った。


「………っはぁ」
「!い、今の声って……」


チラ、と思い当たる人物を見る。


「やっぱり若だあっ!」
「「「えぇ!?」」」


若を見ると、顔を赤くして熱さの為かネクタイを緩めていた。
ちょ、エロ!


「何で言ってくれなかったのっ!?」


若の方へ寄ると両手で私がこっちに来ないように前に突き出した。


「……っ、言いたく、ありませんでしたから…っ」


そこまで下剋上しなくていいのに!
若の意地か!


「もー…若は可愛いなぁ!」


笑いながら手を伸ばして若の頭を撫でると、


「……っ」


頬を赤くして目を逸らし、かといって抵抗もしない。
………



照 れ た ! !




「っ!!」


やばい。
激可愛くてドキドキする……!
思わず若のガードの手なんて払いのけて抱きついた。


「っ桜花さ……」


珍しく若が抱き締め返してくれた。





や ば い 





「若……今日泊まってっていい?」
「……っえ…?」


少し考えて、コクンと頷いた。
だりゃっしゃああああっ!!
私は若の手を引きながら光速で家に向かった。








「……俺等、蚊帳の外?」
「……みてぇだな」
「クソクソ!日吉だったのかよ!」
「……これかい。手紙の『当たらんかったらひがむ』って」
「……つまり、当たったらああなるってことか」


跡部がはぁ、と息をついた。


「……日吉に桜花さんを取られたってわけですね」


鳳が黒く言う。


「せやったら、仁王も勝ち組なんやな……」


わざわざ送ってくるくらいですから。


「くそくそ日吉めっ!」
「まさか日吉に取られるとはな…」
「げこくじょーされちゃった?」


そうみたいです。
皆さん、恨むなら仁王を恨みましょう。









−おまけ−



「若〜!大好きっ!!」
「……そうですか」
「まっ冷たい!昨日の素直さはどこに……」
「桜花さん。その話をしないでください」
「……照れてる?」
「馬鹿なこと言わないで下さい。思い出したくないだけです」
「もー、ほんとに素直じゃないんだから!やっぱそんな若が大好き」
「ちょっ…抱きつかないでください」
「抱き締め返してー!」
「嫌です」


次の日からコートでこんな会話が繰り返されるようになりました。
レギュラーたちは昨日ナニがあったのか気になるところですね。





ロシアンルーレット氷帝編
(……好きでしたけど、まさかあんな形で……)