「わぁ……天使さんみたい」


ある木の下で、一人の女の子が呟く。
目の前の金色の髪をした人物を見て。


「つん、つん」


好奇心からか、その人物の頬をつつく。


「ん、む……?」


それに眉を顰める人物。
そしてゆっくりと目を開けた。


「ん〜〜……なにぃ?……」


目を擦って目の前の少女を見た。


「あなたはだぁれ?ここで何をしてるの?」
「う…?あぁ、俺はジローだC…。今、お昼寝中……」
「今は、お昼じゃないよ」
「んぇ?そーなの……?」


小女はコクリと頷く。


「あー……」


芥川は近くからあのコールを聞いた。


「部活、始まっちゃったぁ……」


それでも焦りを見せない。


「ん〜……跡部に怒られるかなぁ」
「あとべ?天使さん、知ってるの?」
「A〜?天使?」
「うん」


少女はニコリと笑った。





「「「ひょーてい!ひょーてい!」」」


ここはテニスコートのフェンスの周り。
人が有り得ない位フェンスにこびり付いているのは、一人称俺様≠フ男が居るせいである。


「……あれ、毎日やってよく飽きねーよな」
「ほんとだぜ。もう耳にタコができたっつの」


試合時は心強い応援だが、普段の部活だと流石に……と、宍戸と向日が呆れたように言う。


「あ、跡部がいつもんやるで〜」
「(パチン!)俺様の美技に酔「おにーちゃんっ!」
「「「!?!?!?」」」


一際高い声がテニスコートに響いた。
丁度その時、跡部のセリフの途中で、しかもジャージを放り投げた瞬間だった。


「……こ、この声は…」


跡部が腕を振り上げた状態で静止する。





風の悪戯か。
跡部のジャージは跡部の頭に落ちた。







「おにーちゃん!」



跡部はあの格好のまま、何も動かなかった。
ジャージを頭から被りながら立ちつくす姿はなんと滑稽なことか。
それほどまで驚いたのだろう。
少女は跡部まで駆け寄る。


「だめだよ、おにいちゃん。お服を投げたら。汚れたら困るでしょ!」


そう跡部に告げる少女。
跡部は目が覚めたかのように飛び跳ねた。


「な、何で桜花がここに居るんだよ!?」


ジャージを剥ぎ捨て桜花を抱き上げた。


「えへへ、来ちゃった!」
「来ちゃった!じゃねーだろ!?あれほどここには来るなって……」


跡部の焦りが増す。


「………な、なぁ、跡部」
「…………」


それに忍足が近寄る。
その後ろにはレギュラーたちがちらほら。


「その子……誰やのん?(めっさ大事そうに抱えとるやん)」
「………」
「お兄ちゃん言うてることは、妹なん?(見たところ、まだ幼稚舎くらいやんな)」
「………」
「こーんな可愛い妹がおるんなr「桜花に近寄るんじゃねぇ変態!」


桜花を隠すようにして忍足から離れる。


「だ、誰が変態やねん!」
「お前だ!その桜花を見る目……。タダモンじゃねぇ……」


桜花を片手で支え、もう片手を目頭に当てインサイトをつくる。


「……跡部さん?どうしたんですか」


傷ついてる忍足を放って、鳳が近寄る。


「よ、寄るなぁっ!黒が移るっ!」
えぇ?
「よ、よせ長太郎……」


笑顔に秘めた震える怒りを放ってる鳳を宍戸が止めた。


「跡部〜。どうしたの?」
「じ、ジロー…。そういえば、お前が桜花を連れてきたよな…」
「あ、うん。さっき近くで会ったC〜」
「桜花に変なことはしてないよな?」
「するわけないじゃん。忍足じゃないんだし」
「俺か!?」


とばっちりを受けた忍足。


「天使さんにね、おにーちゃんのいるところを教えてもらったの」


ニコリと笑って言う桜花。


「……天使?」


跡部が眉間に眉を寄せ芥川を見る。


「(ニコニコ)」
「……まぁいい」
「贔屓やん!」


忍足だから仕方ないです。


「……でよ、跡部。そいつは跡部の妹なのかよ?」


向日が聞いた。


「アーン?岳人、お前、桜花をそいつって言ったな?」
「えっ?」


向日を鋭い目つきで見る跡部。


「桜花をそんな風に言うんじゃねぇ!」


般若のような顔をして言いました。
怖いですね。


「え、あ、わ、悪い……」


向日、あまりの迫力に謝る。


「……跡部さんって、もしかしてシスコ「だっ黙れ!キノコが移るだろ!」
はぁ?
「ま、待てって若……」


鳳同様、宍戸がキレかかってる日吉を止めに入りました。


「おにーちゃん、どうしたの?」
「……何でもねえ。とにかく、ここに居たら危険だ。お、俺様の可愛い桜花が汚染されてしまう……!」


跡部は一人ブツブツと言ってます。


「樺地!」
「ウス」
「あ、樺ちゃん!」
「ウス」
「あ、後は任せた!俺様は桜花を家に帰してくる!」
「ウス」


そう言うと跡部は光の如くその場から立ち去った。


「………」
「………」
「………」
「………」
「………」
「………」
「……跡部さんは……シスコン、です」

「「「(言ったぁ!!)」」」






跡部の意外すぎる一面を見て、その場に居た全員の空気がおかしくなりました。
分かったのは、跡部は極度のシスコンということだった。










−おまけ−



「俺は跡部さんの気持ち少しだけ分かりますよ」
「そうなのかよ、長太郎」
「はい。俺にも妹が居ますから」
「へぇ、そうなのか」
「忍足さんのような人が近づくのはとてつもなく嫌ですからね」
「また俺か!」
「あぁ……確かに」
「宍戸、お前も納得するんか!」


他の皆さんも心の中で同意するのであった。





It is pretty…
(何だよ、文句あるのかよ?アーン!?)