※旧拍手お礼夢



「宍戸先輩、レギュラーに戻ったんだってね」
「……そうだな」


宍戸先輩のレギュラー落ちの宣告された直後。
もしかしたら、レギュラーに入れたかもしれない彼。


「……悔しい?」


隣に居る彼……恋人でもある、日吉若に聞いてみた。


「……悔しくなんかねえよ」


そう答えた先にあるのは、テニスコート。
平気を装っているけど、その姿はどこか寂しそうだった。


「……でも、私は悔しいな」
「………」


そう言うと、少しだけこっちを見てくれた。


「こんなこと……言ったらいけないんだけど、」


でも、言いたい事を大体察した若はすぐに視線を戻す。


「あそこでもし、宍戸先輩がレギュラーから外されていたら……今まで頑張ってきた、若は……正レギュラーになれたんだもん……」


失礼なことだとは思う。
でも、それだけ貴方のコトを想っているの。
今まで、必死で練習してきた貴方を、私はずっと見てきた。
ただ、頂点を目指して……テニスコートに向かう日々。
汗だらけになるまで、ひたすら……。


「……別に、俺は正レギュラーになれなくて清々してるぜ」
「え……?」


ふぅ、と息を吐いてやっと私を真っ直ぐみてくれた。
そして、困ったように笑う。


「ほんと、お前はバカだな……」


私の頬を優しく撫でた。


「……っな、んで…?だって…」


ほぼ涙声になっている私の言葉を最後まで聞かず、


「いいか?俺は……誰かの代わりで正レギュラーになりたいわけじゃない」


その言葉は真剣に私に向かって言った。


「………」
「200人も居るテニス部だ。代わりはいくらでもいる。俺は……その内の一人になりたくねえんだよ」
「……で、も…その中でも、若が選ばれて……」
「ああ、確かにそうだ。だが、俺の実力で誰かを落としたわけじゃない」


実力……。


「俺は、おこぼれはいらない。自分の実力で上に伸し上がりたい」


そう真っ向から言われると、凄く若の意思が伝わってくる。
今まで、一生懸命練習してきたから……その努力を、認められたい。
若の気持ちが。


「……う、えぇっ…」
「……何で泣くんだよ」


若は私の頭をくしゃくしゃと撫でた。


「若……私、若が上を目指せるように…精一杯サポートするっ……」


溢れ出した涙を拭いながら言った。
すると、若はふっと笑って、


「ああ、期待してる」


そう言って、私の涙を拭いてくれた。


「……俺も、その期待に応えなきゃな」


呟くように言って、私の頬から手を離した。
その姿は、やけに儚げで……。


「………若、」
「ん?」
「大好き」
「……分かってる」


少しでも、若の心の安らげる場所を作りたい。


「……泣き止んだか?」
「ん……」


私は少し鼻をすすった。


「若……明日からも、頑張ろうね?」
「ああ」
「私も、応援するから」
「…ああ」


ただゆっくりと頷いた。
そして、私の手をとって、一緒に帰った。





何時か貴方は、その目標を果たすことができる。
貴方の努力を見てきた。
だから、断言できるよ。
私は精一杯、貴方の姿を心に焼き付けるから。


一緒に、歩んでいこうね。





儚げな姿、強い意志
(その姿も心に残して、目標を果たした後、一緒に笑って、懐かしむんだ)