※旧拍手お礼夢



「亮!りょーう!」


校舎を歩いていると、ふいに名前を呼ばれた。
そいつは俺が止まり振り返る前に抱きついてきた。


「ったく、何だよ。びっくりするだろ」
「えへへ…だって、亮が居たから」


俺の顔を見ると、にこっと笑う。
俺の彼女。
自分で言うのもなんだけど、すげぇ愛されてる。


「どこ行くの?移動?」
「ああ。理科室」


そう言うと、こいつは「そっか」と言って俺から離れる。
それを少し勿体ないと思いつつも、俺は体を彼女に向けた。


「私も次移動ー。えっと……どこだったっけ」
「図書室や」
「あ、忍足」
「よう。次は自習やろ?しっかりしいや」


どこからともなく忍足が出てきた。
持っていたレポート用紙を丸めて、目線が大分下の彼女の頭を叩く。


「いった!でもやった!図書室涼しー!」


頭を押さえつつも、嬉しく笑顔を作る。
俺はそんな風にじゃれている(?)二人を見て少し嫉妬心が生まれる。
そんな俺に気付いたのか、忍足が気付いて声をかける。


「すまんな、宍戸。こいつ連れてくで」
「えー!もっと亮と居たい!」
「あかん。授業には出てもらわなな」


彼女は頬を膨らませて忍足からあからさまに目を逸らすが、忍足は首根っこを掴んだ。
一瞬短い悲鳴を上げて、彼女は引っ張られていく。


「忍足っ!乱暴はんたーい!」
「言っても聞かん奴はこうするんや」


反抗するも、力では敵わない。
それが分かったのか、彼女は抵抗するのはやめた。
代りに、俺の方を向いて合図をした。
人差し指を上に上げて、口ぱくで、


「お昼休み、屋上……か」


彼女の言いたいことは分かった。
その合図で、俺はさっきの嫉妬心なんかは吹き飛ぶ。
むしろ、凄く胸が高鳴る。


「ったく……敵わねぇな」


初めて付き合った女。
俺は何をしたらいいのか分からなかったし、戸惑っていた。
だが、そんな緊張も束の間、あいつの傍に居ると落ち着く。

その時から、俺は覚悟をした。
お前に、依存してしまう覚悟を。

初めて、人を愛しいと思った。
初めて、人に嫉妬をした。
初めて、絶対離れたくないと思った。


俺は完全に――――あいつに染まってしまった。





君に染まる準備はしていた
(いつかお前も、俺に染まる覚悟をして欲しい)