「………ねぇ跡部」
「あ?なんだよ」


私は、私の目の前で座っている跡部を見る。
跡部は今屋上の地べたに腰をおろしている。
珍しい。学園の跡部様が。
そんな跡部は眉を少し寄せて私を見る。


「あったかいね」
「……そうだな」


今は秋から冬にかけた季節。
だけど、今日は妙にあたたかい風が吹いていた。


「ふふ、それにしても……跡部、地べたに座ってるの似合わないね」
「…誰がそうさせてんだよ」
「だってー、こういうお昼は一緒にゆっくり過ごしたいじゃん?」
「……まぁいいけどな。俺も、悪い気はしねえ」


そう言って、空を仰ぐ。
……ほんとう、綺麗だなぁ。
私の隣に跡部が居る。
そんなことが今でも夢みたい。
まるで、


「なんだか運命感じるなぁ……」
「はぁ?」


そう、運命。
そんなことを言うと、跡部は私に視線を移し、訝しげに見る。


「だって、こーんな平凡な私が、学園の跡部様とこんな風に一緒に居るなんて」
「……急になんだよ」
「だってよく、男は星の数ほどいる、って言うけど……その中で私は跡部と出逢って、好きになって…」
「………」
「こんなにも愛してる」


自然と口元が綻ぶ。
言いながら跡部を見ると、少し驚いたような顔をした。


「まさか、お前がそんなこと考えてたとはな」
「あ、今照れてるでしょ」
「ばーか。大体、俺様は他の星屑とは輝きが違うんだよ」


出た跡部節。
さすがと言えばそうなんだけど……。


「あはは、確かに。毎日毎日、鬱陶しいくらい輝いてるよね」
「鬱陶しいとはなんだ」
「冗談だって」


二人の間に少し笑いが漏れる。
こういう時、本当に幸せを感じる。


「つーか、逆だろ?」
「へ?」
「数いる女の中から、俺は桜花
を見つけた。そっちに感謝だろ?」
「なっ、自分勝手な……」
「俺は誰よりも輝いてるからな。お前を見つける方が大変だ」
「ぶう……」


えらそうなこと言ってるけど、納得できるのが悔しい。
そして跡部も、私が反論できないのを知ってて言う。
かなり意地悪だ。
でも、私負けない!


「見つけて、どうなったの?」
「は?」
「跡部ば私を見つけてくれたところまで分かった。で、それから私の事をどう想ったの?」


そこまで言うと、跡部は私の意図が分かったのか、くすりと笑って、


「桜花、お前も考えるようになったな」
「跡部に似てきたんだよ」
「俺はこんなんじゃねえよ」


そう言って笑ったと思ったら、急に私を抱きよせた。
急なことで驚いていると、


「俺は、柄にもなく桜花を愛しいと思った」
「……っ」
「ばかみてぇに、お前に依存してる」


そう言って、私のおでこにキスをした。


「……やっぱり、跡部には勝てない」
「当たり前だ。桜花が望むなら、もっと言ってやるぜ?なんたって、運命≠ネんだからな」
「もう、調子に乗って…」
「桜花、」
「……?」
「愛してる」


こんなにも、
あなたから貰える言葉が嬉しいと思ったことはない。

やっぱりこれは、
運命≠ネのかな?





何でもない午後のひと時
(ふと運命を語り合うと、)(幸せが見えたりする)