「………ねぇ、亮」 「ん?何だよ」 「何で急に、海なの?」 私は亮に連れられて海に来ていた。 神奈川の海だからそう遠くはないんだけど……。 折角部活の無い休日に、どうして海なのかが私にとっては疑問だった。 「別にいいじゃねえかよ」 「でも……もう、海に入れるような時期じゃないよ?」 「んなの知ってるよ」 ……だったらどうしてなのよ。 急に電話してきたと思ったら、待ち合わせ場所と時間を言って切っちゃうし。 どこに行くのと聞いても「秘密」の一点張りだったし。 少し楽しみにしてたら……この肌寒い時期に、海。 「でも、周り誰もいねーし、ゆっくりできるだろ?」 「そうだけど……」 「ったく、そう膨れんなよ。ほら、座れよ」 亮は石段に腰を下ろす。 そして横に手をつき、そこに座れと促した。 私はとりあえず座る。 「…夏だったら千鶴の水着見れたのにな」 「……夏休みに来たじゃない」 実を言うとこの海には夏休みに1回亮と来た。 そして、今日が2回目。 この海に来たのには何か理由があるのかな? 「だってあん時は、千鶴が変なヤツに絡まれないかってのが心配で周りばっか見てたんだぜ」 「なっ……もう、そんな事考えてたの?」 「ったりまえだろ」 少し恥ずかしくて亮の顔を上目で見上げると、亮は優しく微笑んだ。 ……亮って、こんな恥ずかしいことさらっと言える人だっけ。 「……何か、亮って跡部くんや忍足くんに似てきたよね」 「!?はぁ?いや、それはねーだろ」 「あーる!…んじゃあ、亮は私のこと好き?」 「ああ、大好きだぜ」 ………っ。 付き合い始めた当時はこんなことサラっと言わない! 「やっぱり傍に居ると性格って似るのかな……」 「おい、何遠い目になってんだよ」 だって……。 あの時の純情極まりない亮は可愛かった。 ……いや、今の亮も大好きだけどさ。 「……お前は知らねーと思うけどな、」 亮は私から視線を正面に移した。 そして少し溜息にも似た息をつく。 「俺、あの頃お前についていろいろ悩んでたんだぜ?」 「……え?」 すると、亮は私の知らなかった気持ちをたくさん教えてくれた。 「付き合い始めた頃……俺って、彼女とかそういうのあんまねぇし……めちゃくちゃだったろ?」 私は思い出す。 あの時は、結構私から誘う方が多かった。 帰りに誘っても、亮は少し顔を赤くして話しかけても目を見て話すことができてなかった。 私はそれが少し微笑ましかったけど。 付き合っていくうちに……立場が逆になった。 亮が私をリードしてくれるようになって、さっきみたいに恥ずかしい言葉をたくさんかけてくれるようになった。 嬉しかったけど、やっぱり恥ずかしい。 そんな私を亮は楽しそうに笑って……。 「そん時、跡部と忍足が……余計なお世話だっつってんのに、色々な……」 その色々が気になるな。 でも、それを聞いたら亮の努力が無駄になりそうだったから聞かなかった。 「とにかく、素直になれとか言ってきたから俺も、今みたいになれたのかもな」 ……素直すぎるような気もするけど。 それでも嬉しいから、何も言わない。 「……じゃあ、何で海なの?」 「ん?あー……何か、今年一番印象に残ってんのが海なんだよな」 亮は海をまじまじと見つめた。 私もそれにつられるように海を見る。 冬の海は静かに波打っていた。 聞こえるのは亮の吐息と波の音だけ。 私は少し目を閉じる。 ああ、これ以上に心地良いものはあるのだろうか。 「……それに、こういうのってなんか憧れね?」 「え?」 目を開けて亮の方を見たら、亮は何か企んでいるように笑った。 私は首を傾げる。 一つ分かるのは、こういう時の亮は何か予想外の事をする。 「千鶴、俺の事好きか?」 答えは決まってるのに、聞くなんて意地悪だ。 それでも私は頬が火照るのに自分で自分に呆れる。 「…好きだよ。亮の隣に居るだけで、こんなにドキドキするんだから……」 こんなこと、普段なら言わないのに。 だめだね。 今日は、何だかこっちまで素直になっちゃう。 「俺は、好き≠謔閨c…愛してる≠コ」 亮はこの時だけ頬を赤くしてた。 そしてゆっくりとその顔が近付いてきて、慣れない言葉を言ったその唇で甘くて深いキスをしてくれた。 後から言うなんてずるいよね。 私だって、愛してるんだから。 意地悪な彼は素直に愛を告げる甘夢 (このキスが終わったら)(私も愛してる≠チて叫んでやる!) 1周年記念アンケート第3位の宍戸さんです! 甘い夢ということで、まずどんな宍戸さんにするか悩みました。 私的に、純情な宍戸さんも大好きですが、今回は男らしい宍戸さんに挑戦しました! ……男らしい? 男らしかったかどうかは私の胸にそっと仕舞っておきま(ry 普段言わなさそうな言葉を言わせたかっただけです。 1周年ありがとうございます! 20080920. |