「あ……。もうこんな時期か……」


璃乃と仲直りをした次の日。
今日の天気は……初雪だった。


「……寒っ」


昨日の夜から振っていたのか、結構積もってる。


「……この調子じゃ練習なさそーだな」


そんな事を呟きながら着替えた。
雪は、あまり好きじゃない。


「あんま気がのらねぇけど…」


寒い日は学校とかサボりたくなってくる。
でも、折角璃乃と仲直りができたんだ。
今日学校に行かないでいつ行くんだ俺っ!


「うお…」


外に出てみると綺麗な雪景色。
いつもは堅い地面も、今日は踏み心地がいい。


「あ。何か楽しいかも」


ボスボスいって俺の足跡がつく。
どうやら、まだあまり人は通っていないらしく俺の足跡以外は見当たらない。


「よーし、俺が天才的足跡をつけてやるぜぃっ」


そう言ってスキップをしようとすると……


「……ブン太、何やってるの?」


聞き覚えのある声に、一瞬行動を踏みとどまった。


「あ、璃乃……」


チェックのマフラーを首にかけている璃乃の姿があった。
そして、今俺がしようとした行動を思い出した。
……すっげえ恥ずかしっ!


「あはは、おはよっ、ブン太」
「……お、おう」


でも、璃乃は笑って挨拶をしてきた。
俺は、少しだけバカにされないで良かったっていう気持ちと、前みたいな純粋な気持ちが出てきた。


「でも、綺麗だよね……雪」


そうやって降り積もる雪を眺める。
俺も、少し真似して雪を見た。


「……初雪って、そんなに意識したことねぇけど」
「あは、でも…今回は凄い綺麗って思えるよ」


それは俺も同じだ。
……なんでだろうな。


「それに、こんなに楽しいっ!」


すると、璃乃はさっき俺がやってたようにスキップをし始めた。


「ほらほらっ!足跡〜」


そうやって、笑顔ではしゃいでる璃乃の姿を見ると、改めて璃乃が好きだって感じる。
不思議だよな。
こんな雪、去年と変わってねーのに。


「ブン太、早く学校に行こっ」
「ああ、今行くっ」



お前と一緒だと、雪までいとおしくなる。



璃乃が雪の上を走る。
それに続いて俺も走る。
雪には二人だけの足跡。


「あは、楽しいね〜」
「お前、はしゃぎすぎ」
「ブン太だって!」


そんな会話をしながら学校へ向かった。


「……っくし!」
「あれ…?ブン太、風邪?」
「ちげーよ…。ちょっと冷えただけだ」
「………」


すると、璃乃は俺の顔を見て、


「……鼻真っ赤」
「なっ…そういう璃乃だって真っ赤だ……!」


俺が言い終わる前に、何か暖かいのが俺の首に触れた。


「……?…これ…」
「私のマフラー。少しはあったまるよ」


璃乃は自分のマフラーを解いて俺にかぶせてくれた。


「……これだと璃乃が寒くなるだろ」
「いーよ、私は。充分あったかかった……っくちゅ!」
「……言った傍から」
「…うぅ」


俺は少し溜息をつき、璃乃を少し自分の方へと引き寄せた。


「っ…?」
「ほら、これならいーだろ」


そして、マフラーの半分を璃乃に巻く。


「っあ……」
「………」


俺は少し照れくさくて璃乃の顔が見れなかった。


「……あったかい」


璃乃はマフラーに顔を埋めながら言う。


「……だな」


俺は璃乃の顔を見ずに言う。
こんなに近くに、璃乃が居るのは初めてだと思う。


「……ねー、ブン太」


ん、と俺は璃乃の声に耳を傾ける。


「……今日の雪ね、なんだか……今までのどんな景色より綺麗に思える」


囁くように、呟いた。
それは、さっき俺も感じたこと。


「……俺も、だぜ」
「ほんと?……ふふ、同じだね」


この時、俺は璃乃の方を向いた。
璃乃は綺麗に微笑んでいた。
背景が白いから、余計に……。


「……?ブン太、どうしたの?」
「あっ…いや、なんでもねぇ」


俺はすぐ目を逸らした。
胸の鼓動が止まらなかった。






この気持ちには、何の偽りもなく。

純粋に、きみだけを見た。

こんなに胸が高鳴るのは初めてだ。

そして、こんなに気持ちが熱くなったのも………。


まるで、降り積もる雪も溶かすくらい。

熱情に気付かせてくれた、綺麗な雪。



白色―――





しろいろ
(寒いのに、なんでこんなにあたたかいのか)