丸井side




「あははっ、仁王ってば〜!」


実は今、すっげぇ気になってる事がある。


「は!?な、何言ってんのよっ!!」


璃乃の事だ。
最近、璃乃は仁王と一緒に居るのが多い。
その時の璃乃の顔は……
笑ったり、
照れたり、
怒ったり、
百面相ってくらい、ころころと表情が変わる。


「……ちぇ、何だよ…」


璃乃は、仁王が好きなのか?


「……むかつく」


他の……俺以外の奴と璃乃が話していると、すげぇ腹立つ。
こういう時、本当に璃乃が好きなんだと思い知らされる。


「あははっ」


璃乃の笑顔を見るのは好きだ。
でも、
その笑顔は俺に向けてじゃない。
それだけが、不快で。


「……はぁ〜」


ガラにもなく、溜息がでる。


「おい、ブン太」


二人で話していると思いきや、仁王が俺を呼んだ。


「ちょっと!何でブン太を呼ぶのよっ!」


返事しようかと思っている時、璃乃が小声で仁王に言ったのが聞こえた。
……俺が行くと、嫌なのかよ。


「……何だよ」
「いや、ちょっとな…」
「ちょっ、仁王…!」


璃乃が焦ってる。
俺に聞かれたくない話なのか?


「いいじゃろ?璃乃」
「で、でも…」


何だよ、呼んどきながら。


「………用がねぇんなら行くぜ」
「あ、ちょ…っ」


俺は、二人から離れた。
そして、もう教室に居辛かったから、屋上へ向かった。







「……どうしたんだろ、ブン太」
「さぁな?腹でも減ったんじゃろ?」
「……んなわけないでしょ」
「それにしても……お前さんという奴は」
「だ、だって、いきなり言えるわけないじゃん!」
「文句を言うな。折角昨日一緒に帰ったんじゃろ?」
「う……。だ、だからって、『今日も一緒に帰ろっ(はぁと)』っていうのは…」
「……根性ナシじゃのう」
「なっ!(はぁと)まで必要ないじゃん!」
「………はぁ」







「ったく、何なんだよ…あいつら…」


屋上で一人、俺は腹を立てていた。


「なーにぶつぶつ言ってんスか?ブン太先輩」


……訂正。
二人になった。


「……何だ、お前か」
「な、何だってなんスか?」


俺は赤也から視線を逸らした。


「璃乃先輩はどーしたんスか?」
「……うるせぇ。今は璃乃の話すんな」
「…もしかして、ケンカしたんスか?」
「……ケンカ…じゃねぇ」


俺は赤也にさっきのことを話した。


「……はぁ」
「何でいきなり溜息つくんだよ」
「だって…………はぁ」
「………」


ったく…赤也まで、何なんだよ……。


「……嫉妬は、分かんないようにした方がいいッスよ?」
「は……嫉妬?」


俺は赤也に目を向けた。


「そうッス。仁王先輩と璃乃先輩が仲良くしてるのに嫉妬したんでしょ?」
「………」


嫉妬……か。
確かに、そうかもしれねぇ。


「それだけ璃乃先輩のことが好きなんスよね!」
「なっ、でかい声で言うなっ!!」
「むぐ…っ」


俺は赤也の口を手で押さえる。
しばらくして、大人しくなった赤也から手を離した。


「はぁっはぁ……息がつまるかと思ったッス……」
「ふん……」
「……とりあえず、嫉妬はあからさまにしない方がいいッスから」


そう言って、「そろそろ授業始まるから」と、赤也は出てった。
………嫉妬…か。
……教室に戻るか。







教室に戻ると、まだ二人は話していた。
……戻って来なきゃよかったかな。
一歩、教室に入ってみた。
……二人はまだ話している。
なんか……すっげぇ楽しそうだ。


「……………璃乃」


呟いても、璃乃に届くはずがない。
そんなの、分かりきったことなのに、すっげぇ悔しい。
……はぁ、だせぇな、俺。
こんなに……嫉妬してんのかよ。


「……んだよ、むかつく……」


俺は席には戻らず、また教室から出た。
授業なんてどうでもいい。


「…………くそっ」


イライラする。
まだ、二人の姿が目に映る。
……腹が立つ。
璃乃は悪くない。
仁王も悪くない。
分かっていても、気持ちの整理がつかねぇ。
………っ。

何より、自分に腹が立つ―――







相手を想う気持ちはピンク色。

でも

その気持ちが行き過ぎると……?


想う気持ちに少しでも汚れた気持ちが混ざると

たちまちピンクでは無くなってゆく。


渦巻く嫉妬心。
はがゆい気持ち。
独占欲。


それは、



紫色―――





むらさきいろ
(こんなに、璃乃のこと好きだったんだな……)