「どう?天才的だろぃ?」 放課後のテニスコート。 風船ガムを膨らませ、ニコッと笑った男。 「……はぁ、なんでだろ」 遠い。 クラスでは、普通に話しているのに。 今では、フェンス越しに見つめてるだけ。 「……ジャッカルー、取れよー」 「俺かよっ!」 ……お取り込み中だし。 「…どうしたんじゃ?こんなトコで」 笑みとともに現れたのは、仁王。 「ん?あ、…別に」 ていうか、部活いいの? 仁王以外、全員コートにいるよ? 「こっちの方が楽しそうじゃからな」 面白そうに口角を上げる仁王。 ……私をネタにする気か!? 「んで、誰を見とったんじゃ?」 そう言って私の目線に合わせて屈み、コートを見た。 …詐欺師には、お見通しか。 黙っててもいずれバレるだろうし、私は仁王に打ち明けることにした。 「私……ブン太が好きなの」 ずっとずっと、好きだった。 「…ほぅ、やっぱりな」 「何でやっぱりなの!?」 「お前さん、ずっとブン太の事見とったしな」 気付いてるなら聞かないでよ……! 「…まぁ、いっか」 「んで、何でブン太の事好いとぉ?」 「……好きだから、よ」 あの、テニスに打ち込む姿が好き。 クラスで、人気なブン太が好き。 全てが好き。 「…そうか。…なら、俺は璃乃に協力するかの」 「え…?」 「俺が、ブン太と璃乃をくっつけちゃるよ」 マジですか……!? 「……でも、信用していいの?」 「ああ、任せんしゃい」 ……まぁ、心強いよね。 こうして、私の恋は、仁王雅治が協力してくれることになった。 その時見ていた、コートの中はオレンジ色。 夕焼け色に染まってた。 ずっと見ていた、あの人の背中も いつもより大きく見えて、 夕焼け空と、ユニフォームが重なって とても大きな存在になっていた。 オレンジ色――― おれんじいろ (毎日眺めに来てた、貴方の頑張り) |