「ブーン太っ!」
「お、璃乃!」


あれから二人は、何時も一緒に居るようになった。
幸せオーラを撒き散らしている。
そして、恋人は大変だ。


「今日の朝練、頑張ってたよね!」
「まーな。……でも、お前仁王と何か話してただろ」


ブン太がむぅ、と言う。


「あ、あれは……」


璃乃は目を逸らす。


「何話してたんだよ。俺に言えねーことか?」


ブン太は璃乃の目を見て問う。
恋人になると、毎日が大変だ。
今みたいに、嫉妬に心を紫色に染めたり、


「ち、違うよっ!あ…れは、……」
「あれは?」
「………ブ、ブン太との惚気を聞いてもらってたんだよ…っ」


顔を、赤くしたり、


「なっ……。…そんなの……」


それにつられ、ブン太も顔を赤くする。


「そんなの、もう仁王に話さなくていーよ。俺が聞いてやるから」
「えっ、そ、それは……」
「俺の惚気なんだろ?だったら俺に話せよ」


さっきまで紫色だった気持ちが、今度は黒くなる。
勿論、真っ黒な瞳が璃乃に向かう。
璃乃の頬の赤さが顔全体に広がるのを見て、ブン太はクスリと笑う。


「ったく……ほんとに璃乃は可愛いな」


限界の璃乃をブン太は抱き締めた。
その頬の色は、やはり幸せ色。


「も、もうっ……ブン太の馬鹿……」


恥ずかしがりながらも、璃乃もブン太を抱き締め返した。





「恥ずかしいのはこっちじゃよ」
「ほんとっすよ」


教室に居た仁王と、様子を見に来た赤也が呟く。


「周りの事、絶対目に入ってないッスよね」
「そうじゃろうな。あんなにラブラブっぷりを見せ付けるからのう」


全く、と仁王は腕を組む。
ブン太と璃乃は、未だに触れ合っている。


「……一時は、ほんとどうなるかと思ったんスけどね」
「俺もじゃよ。……ちょっと俺もやばかったのう」
「え?」
「いや、こっちの話じゃ」


仁王は優しい眼差しで二人を見つめた。


「……幸せなら、いいぜよ。なぁ、赤也」
「?あ、そうッスよね!」





心では、いろんな感情が混ざる。

そして色を浮かばせる。


気持ちが届いていない、もどかしさが生み出す色ではなくなった。

お互いを想い、そこから生まれる色は、


どれもとても綺麗で。


優しくて。

あたたかくて。



誰の心にも、絶対ある色がある。

それは、何か知ってる?


それはね、少しでも色と触れると、すぐに感染して。

すぐにその色そのものになってしまう。


どんな色にでもなれるんだよ。


それはね……。



透明色―――


色≠ヘ……感情そのものなんだ――





とうめいいろ
(何にでもなれる。見えないけどあたたかな色)


−END−