部室での事があってからしばらくして。
二人は、長く部室に居るのも不自然だと思い、外に出ることにした。
すると、すぐに飛んで来たのが、


「璃乃!」
「ブン太先輩!」


この二人だった。


「どうじゃった?」
「結果は?」


二人は凄い勢いで璃乃とブン太に話しかけた。


「……え、えっとね、何か、私が言う前に……」
「何か、勢いで言ったら……」


ここまで来て、まだ気付かないのでしょうか。


「……つか、赤也たちは何を話してるんじゃ?」
「へ?そーゆー仁王先輩たちだって……」


しばしの沈黙。


「……えっと、ブン太先輩、言ってもいいッスよね?」
「……ああ」
「俺、ブン太先輩から璃乃先輩について相談受けてたんスよ」


赤也は打ち明けた。


「……え、ブン太も?」
「……まぁ、な」
「で、俺は何とか考えて両思いにしよーと……」


璃乃は言葉が出なかった。
ブン太が赤也に、てことは……。


「私たち……ずっと、両思いだったの……?」


目を丸くして、呟いた。


「……そういうことに、なるじゃろうな」


仁王が微笑みながら、璃乃の肩をポンと叩いた。


「……え?てことは、仁王先輩も……」
「ああ。璃乃に協力しとった」
「えー!?そうだったんスか!」


赤也は大袈裟に驚く。


「ふふ、ありがとう」


璃乃は微笑して、赤也に言う。


「……はぁ、俺の今までの苦労は……」
「お前、そんなに何もしてねえじゃん」
「ひどっ!俺、頑張ったッスよ?特にあの王様ゲームの後なんか……」


言いかけて、赤也ははっと口を押さえた。


「……ほう、あの後、赤也がブン太を慰めたんか?」
「ち、ちげーよ……」
「え?そうなの?ねぇ、赤也…教えて?」


璃乃も興味で聞いてみた。


「言っていいッスか?」
「……だめだ」
「あの、璃乃先輩……」
「だめだっつってんじゃん!」


ブン太は声を大きくして言った。
そんなブン太を、仁王が抑え、


「さあ、赤也。続きを言ってもいいぜよ」
「なっ!仁王!」
「えーっとッスね……あの後、ブン太先輩、泣いてたんスよ」
「えっ……?」


璃乃はブン太を見る。
ブン太は「赤也の奴……」と顔を赤くしながら怒っていた。


「ブン太先輩、相当後悔してたッス」


しみじみと赤也は言う。


「なるほどな。じゃから、罪悪感でそれから言葉を交わさんかったんか」


仁王は押さえていたブン太を離す。


「……それもあるけどよ、……」


ブン太は言葉が見つからなかった。


「………嬉しい、」
「え?」
「嬉しいよ、ブン太っ」


璃乃は、ブン太に抱きついた。


「私……ブン太に嫌われたんじゃないかって……ずっと、心配してて……っ」
「……嫌いになれるわけねーじゃん。……俺が悪いのに」


ブン太も、璃乃を力強く抱き締めた。


「……見せつけッスかね」
「見せつけやのう」


少し嫌味っぽく言っているが、その二人の表情も嬉しげだった。
やっと、ここに一つの恋が実った。


「ブン太……大好き」
「……俺は、愛してるぜ」


もう一度、お互いを確かめるかのように強く抱き締めた。





初めて、恋が実った。

その気持ちは、誰もが幸せになるくらい。


誰かの頬が、薄っすら幸せ色に染まったら。

周りも感染するかのように、幸せになる。


それは気持ちが分かち合えた時。

通じ合った時。



全てのものが、幸せに見えるんだ。


幸せになる色は、人それぞれ違う。


ただ、私たちは。

相手の感情がすぐに分かる色。


頬が染まった時。

照れてるように見えて、しっかりと幸せをアピールしてる……。



ピンク色―――





ぴんくいろ
(幸せな色は、皆が持ってる)