「聞いて!仁王!」
「……何じゃ、璃乃」


昼休み、璃乃は興奮気味に仁王に話し始めた。
それは、今日の朝の事。


「凄くない?偉大な進歩だよね!」
「ほーう。そんな話を一人身の俺にしにきたんか」
「わ、私だってまだ一人身だよ!!」


すると、仁王は溜息をついて、


「そんなの、傍から見たらバカップルじゃ」
「ええっ!?」


な、何を言ってるのこの人はっ!


「はぁ、気付いとらんか」
「き、気付くわけないじゃん!だって、私……ブン太と仲直りしたばっかりだよ?」
「そういう時が一番動かされるんじゃよ」
「ほうほう」
「えーか?璃乃。そろそろ止めたらどうじゃ?」
「へ……?」


仁王の言葉に、私はキョトンとした。


「や、止めるって……」
「……勘違いしなさんな。片想いを止めたらどうじゃって話じゃ」
「……っえええぇ!?」
「いちいち驚きの多い奴やのう」


そりゃ驚くよ!


「璃乃、今日ブン太に告りんしゃい」
「む、無理だよ……」
「いつまでも惚気を聞かされる俺の身にもなってみんしゃい」
「うっ……」


だってだって嬉しくて……。


「惚気は両想いになってから聞いてやるよ」
「も、もう……」


ニヤニヤ笑う仁王に私は頬を膨らました。
……そう言われてもなあ。
告白なんて……恥ずかしくてできないよ……。





その頃。


「だーかーらっ、今璃乃と良い感じなんだよ!」
「あーハイハイ。何回も聞いたッスよ」


屋上でも丸井は切原に話していた。


「……お前、真剣に聞いてないだろ」
「だって、まだ片想いなんスよね?」
「う、……そうだけどよ、」
「まだ安心しただめッスよ。……よし、今日告白しちゃいましょう!」
「っ告白ぅ!?」


叫んでから、口を塞いだ。


「……良い感じなんでしょ?なら、楽勝じゃないッスか」
「ま、まだそこまでは……」
「ブン太先輩、今日、部室で二人きりになるように計画してあげますから!」
「な、!?」
「仁王先輩は俺に任せて下さい!」
「だ、だから赤也……」
「そーいうことッスから!頑張ってくださいね!」
「あ、おいっ!」


最後まで丸井の話を聞かずに切原は笑顔で屋上から降りた。


「こ、告白なんて……」


はぁ、と溜息をつく。


「………」


だが、何か考えるように、屋上にしゃがみこんだ。





そして、放課後。


「あ、璃乃先輩丁度良いところに!」


璃乃が仁王に連れられてテニスコートに着いた。
それに、丸井を連れた赤也が声を掛ける。
そして切原の作戦が実行された。


「仁王先輩!ちょっと打ち合いしません?」
「ほー、久々に負けたいんか」
「違うッス!とりあえず行きましょーよっ!」
「分かった分かった」


切原に腕を引っ張られる仁王。


「(ブン太先輩、頑張って下さいね!)」
「(璃乃、ガツンと言ってやれ)」


二人が同じように笑っていたのは気付かなかった。


「……あ、あの二人、気が合うみたいだね……」


またしても数分で居なくなってしまった二人。


「そうだな。……あ、あのさ、璃乃」
「……ん?」
「ちょっとさ、話があるんだけど」
「……あ、私も…」


何となくぎこちない雰囲気の二人。


「じゃあ、部室行こうぜ」
「うん……」


二人は部室に向かった。
その姿を、切原と仁王は満足気に見守っていた。





「……で、話って?」


部室の中の椅子に向き合うように座っている二人。


「あ、えっと……」


緊張してきたのか、口篭る丸井。


「(…どうしよう、何かドキドキしてきた)」
「(ブ、ブン太の話が終わったら、私……)」


未だ気付いていない。


「その、単刀直入に言うぜい」
「う、うん……」


決心した丸井が真っ直ぐ璃乃を見る。


「俺………



璃乃が、好きなんだ」


そう囁くように言った丸井。
いつも、恥ずかしい時や緊張している時は中々相手の顔を……目を、見ないのに。


それでも、その言葉を言う時は真っ直ぐ私を見ていた。

それから、とても真剣なんだと思い知らされる。





私だけを見つめる瞳……。



黒色―――





くろいろ
(初めてだよ。貴方のこんな目を見るのは)