私と優しい優しいジロちゃんは氷帝コートに着いた。
すると、ぎょっとした目でがっくんが近寄ってきた。


「お、おいジロー!未永の事、手伝ったのかよ?」
「ん?そうだよー。未永一人じゃ大変だもん」
「いいのかよ、手伝ったらレギュラー落ちだって……」


そこまで言って、がっくんは後ろの気配に気づいた。
わお、景ちんではないですか。


「……ジロー、今までどこに行ってたんだよ」


どうやら景ちんは全てを察していたようです。
どー見ても不機嫌だね!


「んーとね、昼寝してた」
「それで?」
「未永がいた」
「で?」
「手伝った」
「お前は話を聞いてたのか?」


それはきっとレギュラー落ちの話。
腕組をしている景ちん。
すると他のレギュラーもやってきた。


「なんや?跡部怒っとんの?」
「ゆーし……。ジローがさ、未永のこと手伝ったんだよ」
「はぁ?未永の手伝い?……馬鹿だろ」


ちょっと亮ちゃん!
馬鹿とは何よ!


「きっと、寝ぼけてたんですよ」


……チョタよ。
寝ぼけていなかったら私を手伝わなかったとでも言いたいのかーい。


「そりゃあ……」


何その曖昧な微笑み!
いや、爽やかでいいと思うけど!


「……下剋上だ」


そこのキノコちゃん。
こっそりガッツポーズするのは止めてあげようぜ!


「もー皆の馬鹿ー!ジロちゃんは私の為にしてくれたんだからね!」


訳もわからずにこにこしている天然なジロちゃんの代わりに言い返す。


「だが約束はしただろ?」
「そんな一方的じゃん!景ちんの独裁政治じゃん!」
「いや、政治ちゃうけど……」
「ジロちゃんは眠りを我慢してまで私を手伝ってくれたんだよ!皆と違って!」
「「「(うっ、)」」」


一瞬どきっとなった皆さん。


「あーあ、ジロちゃんは優しいのにねー。皆はこーんな可愛いマネよりレギュラーの座の方が大事なのね!」


見て!私の悲劇のヒロインっぷり!
ピヨとかチョタはバカみたいに思ってるだろうけど、亮ちゃんやがっくん辺りはわたわたしてる。


「……だから、俺様はお前のマネとしての自覚を……」
「持ってますー。景ちんには分かんないだろーけど!」
「(カチン)……ったくぴーぴーうるせぇな」
「ぴーぴーとは何よ!ぴーぴー!!」
「「「(子供だ、子供のケンカが始まった……)」」」


ついに二人の言い争いになってしまい、周りはどうしようか迷う。


「大体、倉庫が豪華すぎるのよ!そんなとこにお金使ってるなら私に一建家くらいちょうだいよ!」
「アーン?何で俺様がお前なんかに金使わねーといけねえんだよ!」
「理由なんてないわよ!」
「作れよ!」


ぎゃーぎゃーと言ってます。
こんなに大声で景ちんとケンカするのは……久しぶりかな。
月イチくらいでこのくらいのケンカはする。


「景ちんの馬鹿ー!」
「はっ!馬鹿はお前だろうが」


言い返せないのがいやだね。
心の中で言ってやる。
ホクロマン!


「ってか、最近朝起きても皆居ないじゃない!どこに行ってるのよ!」
「そんなのお前に関係ねーだろうが!」
「何で居ないのよ!」
「っ……お、お前の寝起きはうんざりするからだよ!」
「〜〜っ……何よ!寂しかったんだから!」
「えっ……?」


一瞬、景ちんが意外そうな顔をして言葉を詰まらせた。


「も〜〜!景ちんなんて嫌いだもん!」
「(プチッ)……俺様だってお前みたいな聞き分けのねえ女なんか…」
「わーわー!ガタンゴトンガタンゴトン!!」


嫌い、って言葉が聞こえそうだった。
いやいや、実際言おうとしてたけど。私の方が先に言っちゃったし……。
私は自分だけ耳に手を当てて聞こえないようにして逃げた。
……古い手を使ってしまった。
だけどそんなことは気にしてられない。
私は氷帝コートから離れたところまで行く。
後ろから誰か付いてきてるような気がしたけど構わなかった。





「……相変わらず、子供みたいなケンカやな」
「未永が子供なだけだろ」
「跡部、自分の気持ちには素直になった方がええで?………俺みたいにな!」
「黙れクソ眼鏡」


忍足は傷ついた。


「まーまー跡部、そう怒んないでよ〜。俺が勝手に手伝っただけだC」
「……んなこと知ってる。……バカジローが」
「あはは〜。ごめんね、跡部」
「なんで謝るんだよ」
「だって、跡部って未永のこと好「やっぱいい。寝てろ」


言葉を遮った跡部を面白そうな顔してジローは見る。
だが、これ以上言うのも何だと思いニカッと笑顔を見せた。


「だけどさ、宍戸が追いかけてったけど、宍戸だけで平気なのかよ」
「……いいんじゃないですか。幼馴染なんでしょう?」
「日吉も追いかければよかったのに」
「は?何で俺が……」


鳳に言われるが、日吉は関係なさそうに言ってコートに戻った。


「ったく……素直やない奴が多いな、」


忍足は困ったような笑みを浮かべて言った。


「………」


跡部は何か考えているのか、拳を強く握った。