さて、そろそろ疲れてきたなぁ……。
何もしてないけど。


「はっ、俺様の美技に酔いな!」


……あ、もの凄く疲れそうな試合を見つけてしまった。
見ているこっちが、ね。


「なんのっ!綱渡りぃ!」


ボールがネットの上を転がってる!
うわっ!すげぇ!!


「どう?天才的ぃ?」
「ブンちゃん天才ー!かっこいいー!!」


思わず、叫んだ。
そして、気付いた。
景ちんがもの凄い怖い顔でこちらを睨んできた事を。


「未永……そこは跡部を応援しなあかんやろ」
「あ、侑士。がっくんは?」
「日陰の方で休んどる」
「それなら良かった。……でも、景ちんを?」
「そらそうやろ。同じ学校なんやし」


……だ、だって、景ちんは可愛くないもん!


「可愛さで決めんなや……」


あれ?何で心の言葉にツッコんだの?


「全部口に出とったで」


最近は心の声も読まれるから、私の口が間違えちゃったのかも。


「あはは。でも、本当のことじゃん!」
「……まぁ、確かに跡部は俺様やけどな、応援したり?あれでも喜ぶで」


……本当かなぁ。


「ん、分かった!やってみる!」


大きく息を吸い込んで……


「けーぇちーん!!景ちんのビギでブギウギだあーー!!」
「「意味分かんねえよ」」


あ、景ちんと侑士にツッコまれちゃった。


「もーらいっ!」


そこでブンちゃんの天才的妙技が決まった。
やっぱりブンちゃんは天才だったのかもしれない。可愛さの。


「……お前は俺様の邪魔をしに来たのか?」


遠くから景ちんが睨んでる……。
怖っ……!!


「おお応援してるよ!?頑張れ景ちんーー!!」


はぁ……景ちんって怖いのね。
あの氷帝コールの生みの親だもんね、声援というものは俺様のためにあるものだ!とか思っているのかも。


「丸井くん頑張れーーー!!」


私の横から、ジロちゃんの声が聞こえた。


「ん?ジロちゃんはブンちゃんの応援なの?」
「うん!丸井くんは俺が憧れてる選手なんだC〜!かぁっこEー!」


フェンスを手で握ってかじりつくように見ているジロちゃん。
あぁ……可愛E!


「……ふん、てめえの弱点はお見通しなんだよ」


出た!!景ちんのインサイト!!


「あれで何度説教を受けたことか……」
「説教でインサイト使うなや……」


全くだよ。あれ、本当に怖いんだから。
俺様専用ソファでふんぞり返って足を組みながらついでに腕まで組んじゃって片方の手なんか目頭を押さえちゃって長時間説教……しかもこっちは正座。
あれほど辛いものはないよ。


「まぁ、原因はいつも未永やでしゃあないな」
「それって全部私が悪いみたいじゃん!」
「現にそうやろ」


うっ……本当のことだからか言い返せない……。


「あぁ〜〜!!丸井く〜〜ん!!」


隣のジロちゃんが叫んだ。
どうやら、ブンちゃんが負けちゃったみたい。


「だぁ〜〜っ!やっぱ跡部苦手だ〜〜〜!」


コートから出てきてブンちゃんが叫んだ。


「お疲れ、ブンちゃん」
「おう……」
「随分疲れてるみたいだね……」


確かに景ちんとやったら精神的に疲れるよね。


「……はぁ、俺ってダブルスプレイヤーなんだけどなぁ……。エネルギーが減った……」
「はい、丸井くん!俺ムースポッキー持ってるC!」
「おっ、マジ?なぁ、少しくれよ」
「いいよ〜!一緒に食べよ!」


あぁ……可愛Eなぁ……。
よし、私も今度ムースポッキー持ってこよ!
それでブンちゃんとジロちゃんの間に挟まってキャッキャウフフするんだ!


「……未永」
「あ、景ちん!お疲れ」


私は何か言いたそうな景ちんにタオルを渡した。
えっへん、ちゃんとマネっぽいことしてるでしょ!
景ちんにはこういうアピールをしておかないと、後で何を言われるやら……。


「……ああ」
「ん?景ちん元気ないね?」
「それはな、少しの間忘れられ……っ!」


言いかけた侑士を景ちんが睨んだ。
さすがの侑士もあの眼力には弱いみたい。


「何でもねえよ」
「あはは、でも勝てて良かったね」
「まぁな。こんなところで負けてる場合じゃねえからな」


練習試合だっていうのに、景ちんは本気なんだね。
普段は変な景ちんも、テニスに対しては真面目だから。


「でも勝ち負け関係なく楽しかったでしょ?良かったじゃん!」
「……ま、そうかもな」


そうそう!
楽しければいいんだよ!


「よーし、次で最後の試合、皆で応援しに行くぞー!」


そして、隣のコートに向かった。


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