「いったあいっ!!」


午後の練習時間の最中、私の叫び声が部屋に木霊する。


「どど、どうしたんですかっ、未永さん!」
「ああ……桜ちゃん……」


女の私から見ても可愛い……。


「未永様っ、どうかなされましたか?」


朋ちゃん、そんな丁寧に話さなくていいのに……。


「うう、どうしたもこうしたも……」
「お腹が痛いんですか?」


私がお腹をさすっているのを見て、杏ちゃんが言う。


「そう……。私、きちゃったのよ……」
「「「きた?」」」
「……生理」
「「「ええっ!?」」」


今度は女の子たちの声が部屋の中に木霊した。


「うう……。今日からだから……辛いぃ……」


私ってこう見えて重い方なのよ!
氷帝の時は何かと理由をつけてサボったり逃げたりしてたけど、合宿じゃそうもいかないなぁ……。


「そ、それは大変!未永さんは奥のソファに横になっててください!」


ちゃーんと休めるようにソファがある。
さすが景ちんの別荘!至れり尽くせりだね!


「いっちちー……。未永さぁん!手当てしてくださーい!」


これは……赤やんの声!
どうやら怪我をしたみたいね。大丈夫かな?


「あれー?未永さん?居ないんスかぁ?」


ちょっと!私以外にもマネの女の子たちが居るでしょっ!
あ、ちなみに、私が今居るのはマネ室。
女の子たちが居るのは、よくある部室みたいなところ。
部室みたいなところは選手も自由に救急箱使ったり、汗かいた服を一旦着替えたりできるスペースだけど、ここのマネ室はいわば女の子用の休憩室みたいなものかな。


「切原くん、私が手当てするから」


杏ちゃん!ありがとう!
さり気ないフォローが素敵!男前!いや、女前?


「あれ?あんた、橘さんの妹?」
「……そうよ」
「ふーん……」


あ、あれ……な、何でこんなに会話が重いの……?


「……で、未永さんは?」


どうやら手当ては滞りなく終わったみたいだけど……。
終わったんなら、私のことなんて構わず早く練習に戻ろうよ……。


「未永様はマネ室に居ますよ?」


朋ちゃん!言わないでっ!
でも朋ちゃんからしたら他校の先輩だもんね、答えちゃうよね!


「ふーん……こりゃまたどうして?」
「え、えっと……その……ちょっと……あの……」


桜ちゃぁん!逆に怪しまれるから説明しなくていいのよっ!


「何だ、はっきりしねぇな。……未永さぁん?居るんスよね?」


ぎゃああああーーー!あ、赤やんの足音が近づいてくるぅ!
べ、別に会ってなにも悪いことはないんだけど、絶対体調不良の理由とか聞かれちゃうし……。
誤魔化すにしても赤やんの相手をするのは今の辛い状況じゃちょっと遠慮したい。


「「「ちょっと待って!」」」
「……な、何だよ」


……皆で赤やんを止めてる……。
ありがとう、皆……愛してる。


「今は入らないで」
「今はだめです……」
「あぁ?何で」


あぁ……っ。
赤やんの声が不機嫌……。
こんな可愛い女の子たちに、あぁ?なんて……これはあとで注意しなくちゃ。


「もうっ、だめったらだめなんです!今、未永様は生理で辛いんだからっ!」


っ朋ちゃぁぁん!!


「朋ちゃんっ!」
「小坂田さん……」
「あ゙……っ」
「……生理?」


うわーん!もうだめだぁ……!
赤やんは素っ頓狂な声で言葉を繰り返した。


「へぇ……。未永さぁーん!腹、大丈夫ッスかぁ?」


ちょっとちょっと!
そんなに大きな声で言うことじゃないでしょ!?
で、でも確か赤やんにはお姉ちゃんがいたんだっけ……意外とそこまで変に思ってないのかも?


「……赤也、手当ては終わったのかい?」
「あ、幸村部長……」


ここで丁度良く来ないで!ゆっきー!


「……なんや、腹大丈夫とか聞いとったみたいやけど」


何であんたも居るの、侑士!


「んぁ?未永は?」


ブンちゃんまで!


「あん?またサボってんのか……」


違うから!って景ちんも!?
一体どういうメンバーよ!


「……ん、寝てるんじゃない〜?」


いや、ジロちゃんじゃあるまいし!


「ちょっとちょっと!今、ここは男子禁制ですよ!」


物怖じしない朋ちゃん!皆を追い払って!


「未永さん、生理みたいなんスよ」


赤やーーーん!!
はぁ……もうだめだ……。


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