次の日。体育祭まであと3日。
いつものように永久と亮ちゃんとで仲良く登校する。
昨日はなんか知らないけど永久の機嫌を悪くしちゃったみたいだから、何か変な事言われるんじゃないかと心配してたけど。
何も無かったから、とりあえずは一安心。
そして、


「では出席をとるぞー」


今はもう朝のHRの時間です。


「もう体育祭まで3日しかない。勝負事に負けるのは性に合わないので、皆しっかりと頑張るように」


なんとっ!?
もう3日しかないのか!
ああ……時間が経つのが早い……!


「それと、この時間ではクラス対抗リレーに出る、このクラスの代表を発表する」
「しつもーん!それは何人なんですか!」
「今言おうと思ったところだ。男女3人ずつが代表だ」


なんでこう、私が声を出すと喧嘩腰にバージョンアップして返ってくるんだろう。
不思議で仕方がないよ!


「まず、男子は跡部、宍戸……」
「うわっ!凄い!代表だって!すごいすごいよ、亮ちゃん!!」
「お前はいちいちうるさいんだよ」
「どうして俺様の名前を呼ばないんだ」


ひいいいいいいいい怖いいいいいいいい!
どうしてっ!?どうして二人にそうも睨まれなきゃいけないの!?


「……未永、少し落ち着け。それと、跡部も妙なとこでムキになんなよ」
「あかんでー、嫉妬は」
「何が嫉妬だ。黙れ眼鏡」
「まぁまぁ。景ちんも凄いと思うよ?景ちんの全速力見た事ないけど」


というか、全速力するの?って言う感じだよね。
そう言うと、そこには納得してくれたのか亮ちゃんと侑士が頷いてくれた。


「おい、話を聞け」


ここでナオちゃんがチョークを構えだしたため一時休戦。
残りの男子の一人は野球部のエースだった。
そして女の子は、どの子も運動部で頑張っている子ばかりだった。
もちろん、私の名前が呼ばれるなんてことは天地がひっくりかえってもあり得ない。


「というメンバーだ。代表になった奴らは特に気を引き締めて臨むこと。以上」


そう言ってHRは終わった。


「ったく……お前は俺様をどういう目で見てるんだ」
「えっ……そんなの今更言わせるの?」
「…………」
「あっ、嘘だって冗談!だからほっぺつままないで!」


ひ、久しぶりに私のほっぺを責めてきたな……!
頭を殴られるんじゃないかって油断してた!


「あのな、俺様だって走る時は走る」
「へぇ〜!意外!!」
「……そこまで本気で意外そうにされるのが意外だ」


景ちんは呆れたのか、目頭を押さえた。
この学園の90%以上は私みたいに反応すると思うんだけどな。
いやだって、見たことないでしょ!
景ちんが本気で走ってるところなんて。


「確かに、俺も見た事ねえかも」
「だよねっ!」
「部活でも見いへんなぁ」
「だよねっ!」


やっぱり亮ちゃんと侑士も同じだ!
初めて侑士とは意見が合ったかも。


「でもそれは、跡部が人前で努力してるところ見せないからだろ」
「え?」


そう考えているところに、亮ちゃんの口から思いもよらない言葉が出てきた。
景ちんが、努力……?


「景ちんが……?」
「当たり前だ」
「別に、部活で一生懸命練習したらええのになぁ。跡部も頑固やで」


侑士までがそう言う。
私は不思議に思って景ちんの顔をじっと見つめてみた。
景ちんが努力……ねえ。
私から見たら景ちんは、なんでもできて嫌味な人間!……に見えちゃうんだけど。
やっぱり景ちんも努力してるのかな?


「………なんだよ」
「私も……」
「は?」
「私も……努力したら、景ちんみたいに頭脳明晰でスポーツ万能になれるのかな」
「「「無理だ」」」
「期待して損したよ!」


あまりにも即答で、しかも3人呼吸を合わせて言うもんだから。
少しくらい考える素振りを見せてくれたっていいじゃないか!!
そう思いながら、私は悔しくなって教室から飛び出した。


「………未永、気付いてへんのかな」
「だと思うぜ。あいつが意図的にあんなこと言うわけがない」
「………」
「あ。跡部、意外と照れとるやろ」
「っなことねえよ」
「はは。どうやろか。あんなぽかんとした顔で、跡部のこと無意識に褒めるなんて珍しいやん」


どうやら私は、知らないうちにとんでもない発言をしてしまったらしい。
だが、とうに飛び出してしまった私は、そんな会話がされていることを知る由もなく。
時間だけが過ぎていった。


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