うんうん、良い感じでお別れを言えてる!
ようし、この調子で最後の挨拶にまわるかっ!


「おっ、六角の皆ーっ!」
「やあ未永ちゃん。最後の最後まで元気だね」
「これくらいしか私の取り柄じゃないからね」
「そんなことねーぜ?未永は笑ってるだけで俺らに元気をくれるからな」
「バネりんっ……そんな嬉しいこと言わないで!」
「いてっ!な、なんで俺を殴るんスか……」


私は思わず隣に居たダビちゃんを殴ってしまった。


「だって……恥ずかしかったからっ」
「いいぞ未永。それでこそ俺たちトリオだぜ!」
「むう……いつの間にか笑いを極めてたってことッスね……」


や、別に極めてたわけじゃないんだけど。
六角の皆とお別れするには楽しい方が良いかなーって思った私の心遣いなのだ!


「なんだか楽しそうですね!」
「未永ちゃんは見てるだけで飽きないよ」
「ありがと!剣ちゃんとサエっちも、一緒に居て楽しかったよ」
「本当、これでお別れだなんて勿体ないですね」
「剣ちゃん、これからも部長として頑張ってね。応援してるから!」
「そ、そんなっ……未永さんに応援されたら、僕っ……」


?剣ちゃんが顔を真っ赤にしてる。
そんなに応援されるのが恥ずかしいのかな?


「んふっ。僕たちも、未永さんと離れるのは寂しくなりますね」
「あ、観月ちゃん」
「未永は何かと騒がしい子だったからね」
「静かになって清々するだーね」
「うるさいアッピー!少しはあっちゃんみたいに優しい言葉をかけてよっ」
「淳の発言は優しかっただーね?」


いいのよっ!
笑ってるからきっと褒め言葉なんだから!


「あ、裕ちゃん!」
「……未永さん、」


二人の後ろに居る裕ちゃんに声をかける。
すると、裕ちゃんは少しバツの悪い顔を私に向けた。
ああ……もしかして、


「そんなに私と離れるのが寂しいのねっ!」
「う、わあっ!」


その捨てられそうな子犬のような目を見ると……ついつい抱きしめたくなっちゃうよ!
そうしたら裕ちゃんが驚いたのか、一歩後ろに下がった。


「だーいじょうだよ!そんなに寂しがらないでも裕ちゃんの為なら私いつでもルドルフに飛んでいくから!」
「べ、別にそこまでしなくても……つうか、俺別に寂しがってませんから!」
「え……そうなの?」


私は裕ちゃんから引きはがされ、きょとんと裕ちゃんを見る。
すると、やっぱり裕ちゃんは顔を赤くして、


「う……そ、その……そりゃあ、少しは寂しいというか……調子狂うというか……」
「きゃー可愛い!さすが、1ヵ月経っても純情っぷりは健在だね!」


うんうん!
氷帝に戻ったらこんな可愛い子いなくなっちゃうから……今のうちに癒されておかなきゃ!


「まったく……。それより、1ヵ月間ありがとうございました」
「ううん、私こそ色々とありがとうねっ」
「僕たちも、お世話になりました」
「そんなことないよ。むしろ、私の方が助けてもらってたし」
「クスクス、またたまには遊びにきてよ」
「もち!」
「……あ、そろそろバスに乗らないとな」


サエっちが気付いたように言う。


「それもそうだな……。じゃあ未永、千葉は遠いかもだけど、いつでも遊びに来いよ!」
「俺達、待ってるッス」
「うん!突撃訪問しちゃうからね!」
「じゃあ、さよならです!」


そうして、六角と聖ルドルフの皆とお別れをした。
バスに乗るまでちゃんと手を振って、笑顔で。
皆も笑顔でいてくれた。


「ようし、次は……」
「ようやく来てくれたね」


………まだ行ってなかったんだけどな。


「や、やあゆっきー!」


それにしても珍しいな……。
いつもなら他校と絡んでるとすぐに邪魔……いや、仲間に入ろうとするのに。
誰か別の人とお別れしてたのかな?


「ふふ。最後だと未永とたくさんお話ができるだろ?」
「独り占めだぜ。独り占め」


……今立海の本音が聞こえた。


「……ブンちゃんになら独り占めされてもいいっ!」
「じゃあ俺が先じゃな」
「雅治はだめっ!」


なんか怖いから!
ついでに魔王様の視線も凄く怖い!


「じ、冗談だって。それよりほら、挨拶!」
「ふっ。皆未永と会うのが最後だからと興奮しているんだな」
「あ、蓮ちゃん……」
「これも、お前がこの合宿中頑張っていた証拠だな」
「ええ。私も、あなたの頑張りには目を惹かれていました」
「そんな……う、嬉しいっていうか…照れるなぁ」


元々、この二人は大人びてて同級生とは思えなかったのに……。
その二人にこんなこと言われると、少し恥ずかしい。


「未永さん未永さんっ!俺も、すっげー楽しかったッスよ!」
「赤やん……私もだよ。特に赤やんは賑やかで楽しかった!」
「へへっ、また遊びにきてくれるッスよね?」


あうっ!!
そんな子犬みたいな目で見られたら……私、理性がどっかに行っちゃうよ……!


「ふふ。じゃあその飛んだ理性は俺がもらっちゃおうかな」
「ごめんなさい」


何かと危険なことになりそうだからごめんなさい。
そして最後の最後まで心を読まないでください。


「俺、ずっと待ってるッスから!」
「もちろん行くよ!」


そんなキラキラした目で言われたらっ、こう答えるしかないよねっ……!


「うむ。お前ならいつでも歓迎しよう」
「も、もしかして……私、弦ちゃんに認められてる?」
「もちろんだ。お前は何だかんだ言いながら頑張っていたからな」
「何だかんだって……まぁ、あの弦ちゃんにそう言われるくらい私も成長したってことだよね」


あの堅い弦ちゃんなのに……。


「私って凄くない?ジャッカル」
「俺に聞くなよ。……って、お前……今、俺の名前っ……」
「ん?どうしたの?ジャッカル」
「……!!よ、ようやく……」


あれ、何だかジャッカルがガッツポーズしてる。
そんなに名前で呼ばれたかったのなら、もう少しくらい前から名前で呼んであげた方がよかったかな?


「ジャッカルくんへの態度も成長したということですね」
「それでいいのかなぁ、ヒロちゃん」


ま、紳士がそう言うならいっか!


「にしても、本当よくやったよな。こんな人数、大変だったろぃ?」
「うん……でも、大変っていうより、やっぱり楽しかったよ」


忙しかったけど、皆と過ごすのは嫌いじゃなかったし……。
逆に、色んなことが知れて嬉しかったし。


「そっか。それならよかったぜ。よく頑張ったな、未永」
「っ……!そ、それは愛の告白と受けてもいいのかなっ!」
「だめに決まってるだろ?」


魔王様に肩を掴まれた。
もう、掴まれた場所から力が抜けそうだよ。
……恐怖で。


「ご、ごめんねブンちゃんっ!今のは冗談!」
「お、おう」


ブンちゃんもゆっきーのオーラを感じたのか、苦笑いで答えてくれた。
部に魔王様が居るなんて……本当に立海は大変だね。


「ふふ、最後の最後まで俺の事を様≠ナ呼ぶなんて。よっぽどMなんだね、未永は」


魔王のフレーズはスルーですか。
……今更思うんだけど、
私本当によくやってこれたなぁ。


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