「ん、む〜……」


今はもう……朝かな?
今日を過ごしたら、きっと皆とお別れなんだ。
少し寂しいけど仕方のない事。
……本当は目を覚ましたくない気もする。
だけど、じゃないと皆に会えないから頑張って目を開ける。
すると、


「「「おはよう」」」


私は目を疑った。


「っ……!?あ、れ……皆?」


珍しい。本当に珍しい。
私の同室メンバー全員が、私の顔を覗き込んで、起こしてくれた。


「ど、どうしたの……急に」
「急に、じゃねーだろ」
「確かに昨日は景ちんが居たけど……」
「俺らが朝居ったらおかしいんか?」
「そうじゃなくて……」


ここんところは他の人に頼んだりして私から逃げてたのに!
……いや、逃げてるわけじゃないと思うけど。


「そんなことより、早く準備したら?もう朝食の時間だし」
「えっ、もうそんな時間……?」
「ああ。ギリギリまでお前さんの寝顔を見とったんじゃ」
「未永、流石に涎はないと思うぜ」


雅治と景ちんがくすくす笑う。
私は思わず寝ぐせと口元を拭いた。


「はぁ……未永さん、嘘だよ」


そんな私を見たからか、リョマは溜息をつきながら教えてくれた。


「そ、そう!?よかった……じゃあ、私着替えるよ」
「ん。じゃあ俺らは廊下で待ってるから」


そう景ちんが言うと、二人とも後をついて廊下に出てくれた。


「………」


皆の優しさは嬉しい。
だけど、なんだか余計に最終日だって思わされちゃったな。


「あー寂しいなー……」


私は少し感傷に浸る。
あの俺様だけだった景ちんがこんなに人を思える人になっただなんて……。
うんうん、この合宿のおかげかな。


「未永、早くしろ!置いてくぞ」


………なんでいつも見直した瞬間に前言撤回したくなるんだろう。





「みんなーおはよう!」


朝食を食べ終わると、早速練習。
1ヵ月にもなると、これが日常だと思ってしまう。


「どうしたー未永。なんだか機嫌いいな」
「そう見えるぅー?」


さすががっくん!
私のことよく見ててくれてるんだね!


「すぐ分かりますよ。テンションが鬱陶しそうなので」
「なんでチョタは朝からそう毒舌なのかな」
「じゃあ素直になりましょうか?……未永先輩、今日は氷帝の練習を見てくれるんですよねっ」
「う、うん」


な、なんだか急にチョタの目がきらきらとし始めた。


「ですよねっ。合宿の最後くらい俺、未永先輩に良いところ見せたいですからっ」
「あ、ありがとう……」
「ですから……俺、合宿で一生懸命練習した、ネオスカッドサーブを一番に未永先輩に見てほしいって思ってたんです」


そう言って、某洗剤も顔負けしそうな驚きの白さをもったチョタの笑顔が私に向けられる。
なんでだろう。可愛いのに。
こんなに違和感に押しつぶされそうになるのは。


「チョタっ……一生懸命白くしてくれてるところ悪いんだけど、なんだかそのネオスカッドサーブで殺されそうで怖い」
「未永さんの今の発言が一番失礼ですよ」
「おおっ!いっきに黒くなった!」


やっぱりこれが一番落ち着くなー。
……って落ち着いちゃだめじゃない!?


「なにやってんのやー」
「あ、侑士。なんだか侑士もご機嫌そうだね」
「もちろんや!この1ヶ月間、他の男と同室の未永のことが心配でたまらんかったんやでー?」
「私のことが?」
「そうや。やけどそれも今日で終わり……!未永も無事みたいやから、よかったーって喜んどったんや」
「私の何が無事だったの?」
「何って……ナニやろ」
「すいませーん。ここに変態がいるんですけどー」
「じ、冗談やて!やから通報せんといて!」


さて、いつもの侑士いじりもやったことだし。


「じゃー私、午前はマネ業に励むねー」
「……未永先輩がですか?」
「そうだよーピヨ。あの子たちにはお世話になったからね……。ありがとうも兼ねて、今日は全員でドリンクを作るの」
「未永先輩の場合、ありがとうじゃなくてごめんなさいなんじゃないですか?」
「またまたー!……って、否定できない……!」


何かと迷惑かけちゃったし、私より数倍仕事もやってくれてたからね……。
うん、ピヨの言う通り、ごめんなさいも言っておこう。


「未永、一応お前が一番先輩なんだから、それらしくやってこいよ」
「問題ナッシング!私、これでも皆から慕われてるから!……多分」
「多分かよ。……まぁいい。行ってこい」
「おっけー!んじゃ、皆また午後にねーっ」


そう皆に別れを告げて、私は部室に向かった。


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