「ううっううっ………」 「なんだか、泣いてる未永さんを見てるのは新鮮ですね」 「普段泣かないからなー」 「う、うるさいっ!ぱ、パトラッシュが……っあうう……」 私は感動の涙を流していた。 いや、物語の内容は知ってても……。 やっぱり泣いちゃうもんだよねえ。 泣きながら作文を完成させると、 「ほら、ハンカチだ」 「あ、ありがとう………………って弦ちゃん!?」 なぜ弦ちゃんがここに!? 「おい見ろよ幸村!真田が未永にハンカチ渡してるぜ!」 「へえ。珍しいこともあるんだね」 「紳士的な真田くん、初めて見ました」 「これは揺すれるネタかのう」 弦ちゃんに続いて他のメンバーもぞろぞろとやってきた。 ていうか私、弦ちゃんに優しくされたの初めてなんですけど……! 「す、すまん、つい……泣いている女子には優しくしろ、との教えでな……」 弦ちゃんが私に差しだした手を引っ込めた。 「ううん!いい教えじゃない!私、弦ちゃんって厳しい人って思ってたけど、見直したよ!」 「なっ何を言うかっ!ほ、褒めても何もでんぞ……」 あはは、嬉しそうにしてる。 嬉しそうっていうか、照れてるのかな? 顔を覗き込もうとするとすぐに逸らされる。 うんうん、弦ちゃんでもこんな純情な一面があるんだね! 「ちぇーっ副部長が優しいのは女の子だけッスよー。俺なんか何度泣かされたか」 少し不満そうに唇を尖らせて言うのは赤やん。 まぁ……ジャックの話を聞くと赤やんには特に厳しいらしいけど。 「赤やん、これも弦ちゃんの愛情なんだよ」 「なっ何を……」 「それだったらもっと分かりやすくしてほしいッス!」 「なるほどね……。弦ちゃん、後輩にはもうちょっと優しく接しても罰は当たらないと思うよ!」 「だ、だが……」 「ほら!そんな難しい顔してると、後輩全員がそんな顔になっちゃうよ!」 「ぶっ!!」 それを想像したのか、後ろでブンちゃんが笑いをこらえてる。 心なしか、蓮ちゃんも笑ってるような……? 「副部長!俺、褒められて伸びるタイプなんスよ!」 「そうそう!ついでに言うと私もそうなの!」 「おい、立海は全員宿題終わったのか?」 「勿論だよ。そういう氷帝は大丈夫なのかい?」 「まあ、何とかな……。あとは未永だけだ」 ちらっと景ちんを見てみたけど当の本人聞いてなかった!! 「お、騒がしいと思って来てみれば、どうやら宿題が終わったみたいだな」 「……跡部、報告しに来たんだが」 「やっほー未永ちゃん!」 「うん、空気も軽いし、ラスト1日までバタバタせずに済んだ、ってことかな……?」 ふっと現れたのは国ぃ、きっぺー、国ぃ、キヨ、サエっちの4人。 「4人揃って、どうしたの?」 「各校の代表として、宿題が終わったのを知らせに来たよ」 「あれ、代表?六角は剣ちゃんじゃないの?」 「ああ、剣太郎なら丁度今宿題終わってダウンしてるよ」 なるほど……。 そういえば何気に六角の宿題の進むペース早かったよな……。 「山吹も全員終わったの?」 「うん。元々聞きわけのいい子ばっかだからね〜。苦労しなかったよ」 「そっかー。仁ちゃんも太ちゃんに教えてたくらいだからね」 「そうなんだよ〜。亜久津、壇くんには優しいからさぁ」 「いいね、優しい先輩だね……」 羨ましい……っ! 「はは、山吹は他にも3年がいるから楽だろうな」 「あ……不動峰はアッキーと深っちだもんね」 「ああ深司はまだいいんだが……神尾がなぁ、」 「あはは……きっぺーも苦労してるんだね」 私にはその気持ちがよくわからなくて罪悪感感じるよ……。 私にもう少し知性があったらチョタやピヨや樺っちに勉強を教えてあげられるのに! 「どうやら、不動峰も苦労したようだな」 「手塚……」 「あー、青学も大変そうだねー」 「……まぁな」 国ぃの表情は変わらず、だから大変だったのかわかんないけど、大体の予想はできる。 なんたって、あの生意気王子リョマがいるからねー。 「はは、そっちには1年の越前がいるからな」 「……越前にも苦労したが、桃城も手強かった」 「あらら、桃ちんも?」 「ああ。……あいつは根っからの体力馬鹿、みたいなものだからな」 「だがあいつには火事場の馬鹿力があるんだろう?」 おーおー! 桃ちん、馬鹿馬鹿言われてるけど大丈夫なのかな? 「まぁ、やる気になったら、の話だがな」 「やっぱり勉強が苦手だとやる気も半減になっちゃうよねー」 「そこを鍛えるのも、俺たち3年の仕事だと思って気合いを入れたぞ」 おおう……! なんだか想像できるようなできないような……。 きっと優しい秀ちゃんとタカちゃんに教えられながら、貞っちと周助のプレッシャーに耐えて、なおかつ厳しい国ぃに見張られてるんだろうな……。 あ、英二はやられる側かな? 「だけど、これで宿題が終わったのなら一安心だね!」 「……未永は宿題終わったの?」 「あ、うん、何とか!」 「嘘つけ。あと一つ残ってるだろうが」 「へ?」 景ちんが後ろから腕を組みながら言う。 「お前……担任から課されたもの、あんだろうが」 「……あー!やり遂げた物!」 「それだ」 「それなら大丈夫!私ね、それにはアテがあるのよ〜」 「……アテ、だと?」 「うん!だから、景ちんたちは心配しなくてOK!」 景ちんにVサインを送ると、侑士が首を傾げた。 「ほんまに大丈夫なんか?なんなら俺が今からでも未永の日記つけたろか?」 「日記って……1ヵ月分のを?」 「未永の行動は全て俺の頭ん中にキープされとる!」 それはそれで恐ろしいよ。 とりあえず侑士の言葉に返事はしないことにして、心配そうな顔してる景ちんに、 「だーいじょうぶ!この未永ちゃんに任せなさい!」 「……それが心配なんだが」 「いいっていいって!私でも、一人で計画を立ててやってること、あるんだからね?」 「………」 「まー跡部、未永の言葉を信じようぜ」 「そうですね。ここまで断言する未永先輩も珍しいですし」 「さすがチョタママ!分かってるぅ!」 そんなこんなで景ちんを説得して、勉強会も今日で終わりを迎えた。 いやー、長かったけど、結構楽しかったような……。 皆の優しさも感じられたし、やってよかった、のかな? ×
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