私がコートに戻ると、がっくんが飛んできてくれた。


「未永ーどこ行ってたんだよ?」
「んーちょっとねー女の子の秘密?」
「えっ!?」
「何でそこまで過剰反応するの!?」


近くに居たチョタが私を女の子として扱ってくれません。
解決策受付中です!


「だったら未永が女らしくしたらええんちゃうー?まぁ、身体は十分女の子やけどなっ!」
「侑士の変態を性根から叩き直す方法も受付中でーす」
「変態とは失礼な!」


侑士=変態。
そんな方程式は誰もが認めてる!


「おい未永、跡部はどこ行ったんだよ?」
「亮ちゃん……なんかね、顔洗いに行った」
「顔?」
「そろそろ泣き黒子に飽きたんだよ」
「あれって落とせるのか!?」


まあ真面目に受け止めちゃってがっくんたら!


「冗談だって!景ちんから黒子取っちゃったら誰か分かんなくなる「アーン?」……あ、その心配はないか!」


アーンがあれば景ちんだって分かる!


「未永ー、跡部、黒子ついてるC?」
「ジロちゃん!景ちんに黒子の話題は厳禁よ!」
「お前は黒子に過剰反応し過ぎだ」


と、びしっと言われてしまった。
全く、と息をついてメニューに目を通す景ちんを見て、私は内心ほっとしていた。
戻ってる。
そう、このくらいがいいんだ。
この関係が一番安心する。


「そーいえば、今日は仕事やんなくていいんだろ?」
「よく知ってるねがっくん!」
「そりゃあ午前中ベンチで爆睡してたらなー」
「……私ってそんなに寝てた?」


何だか自分の睡眠欲が恐ろしいよ。
まあ、昨日寝れなかったのもあるかな?


「てことは、午後はずっと俺らの練習見てるのか?」
「残念ながら、もう少しで合宿が終わっちゃうから皆の練習見てくるよ」
「……もう、体調は万全なんですか?」
「ピヨ……もしかして、心配してくれてるのー?」


ピヨの横まで言って肘でこついてやると変な目で見られた。
なんというか、呆れてる感じ?


「あなたは誰かに心配させるのが得意ですからね」
「私ってそんなに困ったちゃん?」
「………」
「ごめんって前言撤回」


だから侑士を見るのと同じ目で私を見ないで!


「………」
「………」


何か、視線を感じる。
私の表情を伺うように、あの人が。


「……はいっ!じゃあ皆練習に戻った戻った!遠くからでも応援してるからね!」


何でお前が仕切ってんだよと景ちんに文句を言われながらも、皆はコートに入って行った。
約1名、残ってるけど。


「………私の顔に何かついてる?亮ちゃん」
「……未永、やっぱ何かあったろ」
「………」


図星をつかれて、どうしようかと胸が高鳴った。
でも、亮ちゃんにはまだ気づかれたくない。
せめて、合宿が終わるまでは。
じっと亮ちゃんの顔を見つめると、亮ちゃんもいつになく真剣な様子で私の顔を見る。


「………」
「………」
「………」
「………」
「……もう亮ちゃん!そんなに見つめられると惚れちゃうよっ!」


帽子のツバを掴んでえいっと亮ちゃんから帽子を奪った。
すると、亮ちゃんは予想外の私の行動に一瞬遅れて帽子を奪おうとする。


「未永……!」
「しーんぱいいらないって!前亮ちゃんも言ったじゃない」


「お前はもう、昔の未永じゃねーんだろ?」

その時の事は、亮ちゃんが一番覚えてるでしょう?


「………」


言うと、亮ちゃんは黙ってしまった。
ありがとう。
私のことをよく見てくれてるってことだよね。


「私は大丈夫だから。後少しで合宿も終わっちゃう……最後まで、皆と一緒に居るから」
「………未永」


微笑むと、眉を寄せて悲しそうな表情を作る。


「んじゃあ、私を疑った罰として夕ご飯まで帽子は私の物ー!」
「っあ、おい未永っ!」


亮ちゃんの隙をみて私は氷帝コートから逃げた。
帽子を奪われた亮ちゃんは諦めた様子で溜息をつき、コートへと身体を向けた。


「……全く、心配症なんだから……」


ふぅ、と息を吐いて帽子を亮ちゃん風に被ってみる。
なんか、ぶかぶかしてるけど……まぁいっか!
挨拶がてら皆に自慢でもしてあげようかなっ!
今日は……いつも最後になっちゃうから、立海から行ってみよー!


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