「………はぁ、」


もう2日目が終わり、3日目へと足を踏み入れてしまった。
その間、俺はこれといって誰にも会っていない。
特に隠れることもせず、じっと動かずにいただけなんだが。
そのせいか、少し時間の流れが遅く感じる。
……これって、ラッキー……なのか?


「どっちかっつうと……少し寂しいな」


俺以外の奴らは、ほとんど誰かと会っただろう。
現に殺されている奴がいる。
でも……何でか、俺は誰にも遭遇しない。
あんなに人はいっぱい居るのに。
そのいっぱい居た人も……着々と数を減らしている。
嘆かわしいというか、信じられないことだ。
減っていく人の中で……立海のメンバーはまだ一人しか発表されていない。


「あいつら、耐性あるからな……」


……そういう自分もこうして生き残ってるんだが。
苦笑しながら部活の面々の顔を思い出す。
こういう状況に陥っている中で思うのは不謹慎かもしれないが……。
あいつら、殺しても死なさそうだもんな。しぶといとか図太いとかいう意味で。
唯一放送で名前が呼ばれた柳生は……立海の中でも特別優しいからな。
自分から進んで人を殺すなんてこと、まずしない。
だから……きっと、殺された。
いや、このゲームで呼ばれる名前の中で……殺されていない方がおかしい。
この状況に耐えられず自ら命を絶つ、という方法をとる奴がいるかもしれないけどな。
でも柳生は、そんなことをするような奴じゃない。

ああ……こういう時になると、無性にあいつらに会いたくなる。
いつもは迷惑ばっかりかけるくせに。
俺に苦労を押しつけてばっかりで、中には後輩のくせにえらぶってる奴もいて。
こうして会いたいと思っている時には現れない。ったく、都合の良い奴らだな。


「………俺、意外と余裕があるのかもな」


こんな状況なのに仲間のことばっか考えてる。
それに、あいつのことも………。
いつもはうるさいくらいなのに、傍にいないと思うと……なんだか寂しいよな。


「今頃、腹空かしてるだろうな」


あいつなら、5日とはいわず2日でバッグの中の食料平らげちまいそうだし。
空腹で生き倒れになっていないか心配になる。
……やばいな、ちょっと本気でそうなっていないか不安になってきた。
なんて、そんな冗談めいたことは抜きにして。
本当に………大丈夫なのか。
まだ、生きてるよな?
あいつはああ見えて寂しがり屋で、臆病だから。
いつも誰かにくっついてばかりで……。


「……何してんだろうな……」


呟きながら、自分の鞄に入っていた武器を見る。
探知機、と呼ばれる掌に乗るくらいのサイズの機械。
はっきり言って……武器と呼べるものではない。
テレビで使っているところを見たりするが、実際に手に取るとどう使うのか分からない。
俺には全く役に立たないものだ。


「………これで、探せたらなぁ」


もう太陽が徐々に昇り始めている。
また今日も、誰かと誰かが殺し合うんだろう。
そんな恐怖ばかりが蠢き、生と死の狭間のようなこの世界で。
あいつは何を思い、どう過ごしているのだろうか。
もしかしたら、寂しくて不安で動けていなかったりしてるのか。

………今はあいつに催促されてあげられるような物、何も持ってないけど。

愚痴ぐらいなら、聞いてやってもいいかな。
ああ、もうなんだか無性に、会いたい―――――