嘘だ。これは絶対に嘘だ。
幻に決まってる。いや、悪い夢でもいい……!
こんな………っ!


「ぶ、ちょうっ……かね……だ、」


観月さんが待っていると言った民家に、
半日ほどかけて向かったが、
そこに観月さんの姿はなくて、
誰の声もしなくて、
ただそこには、
赤澤部長と金田の二人が倒れていた―――


「っ、部長!金田!」


俺は急いで二人に近寄る。
もしかしたらまだ生きているかもしれない。
気絶しているだけかもしれない。
ただ、眠っているだけかもしれない。
そういう期待を持っていたが。


「っ冷たい……」


一瞬にして期待は絶望へと変わった。
二人の手足は拘束されているし、抵抗もしたのかロープの痣も見え隠れしている。
そして大分前に死んだのか、体温が感じられなかった。
冷たくて、白くて……口から血と泡を吐いて。


「っ……う、そだ…」


こんなの、有り得るわけがない。
誰かに襲われたのか?
……でも、それだったら観月さんは?
まだ居ない時に襲われたのか?それともうまく逃げたのか?
見たところ、部長と金田のバッグは漁られた様子はない。が、武器が無かった。
観月さんのものであろうバッグは見当たらない。
…………。

「裕太は無防備すぎるよ。……観月を、本当に信じるの?」

あの時の木更津先輩の言葉が脳裏を過ぎる。
まさか……これは観月さんが?
……それこそ、嘘だ……。
俺はぐっと唇を噛み、理解できないこの状況に頭が痛くなる。
二人に外傷はなかった。
首を絞められた後もない。
泡を吹いてるということは……毒か何かで殺されたのか?
気になり二人の表情を見てみるも、気の毒に思えてすぐに目を逸らした。
二人は白目を向き、涙をも浮かべていることから、凄く苦しい思いをしたことがすぐに読み取れた。


「………教えて、ください」


貴方たちは誰に殺されたんですか?
その時観月さんはどうしていたんですか?
観月さんはどこへ行ったんですか?
………。
観月さん本人に聞いたら、何か分かるだろうか。


「っ……」


そこに思考が至った時、俺は民家から飛び出していた。
観月さんの姿を探しに。
そうしたら、何かが分かると信じて。
二人の仇を取るとまではいかないけど。
ただ、真実を知りたかった。
仲間の……死の原因を。

観月さん……
俺は、貴方を信じてもいいですよね……?


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