家に着いてからというもの、特にやることもなく1日が早く過ぎるのを願うかのように過ごした。
ただベッドに寝転がって、ぼーっとしていた。


「……はぁ、」


何故か溜息が出た。
やる気が起きない。


「………寝るか」


これ以上起きていても何も変わらないだろう。
俺は眼を閉じて眠りについた。







そして、朝。
目覚ましの音が容赦なく俺に降り注ぐ。
気分は昨日と同じく下がったまま、俺は起きた。


「………」


起きているのに眠っているような気分で家を出発し、何時もの道を通る。
そして、学校に着く。
今日から、本格的に3年生だ。


「お、宍戸やん」


靴箱に来て早々、忍足と会った。


「あ、ほんとだ。今日は寝坊してないんだ〜?」


……っと、岳人も居たか。


「うっせー。昨日はたまたまなんだよ」
「ほんまかいな。……まぁ、寝ぼけて2年の時の教室に行くなや〜」
「誰そんな激ダサなことするかよ」


忍足たちを横目に見て、一人教室に向かおうとした時、


「そんなこと言うんだったら連れてってやんないからな〜」


岳人のおどけた声が聞こえた。


「……は?」


俺はわけが分からない、という顔をする。


「宍戸……ほんまに何も知らんみたいやな」


だから何なんだよ。
そういえば、昨日も何か言ってたな。


「……さっきから何の話だよ。何かあんのか?」


俺は二人に聞く。
すると、二人は、


「「噂の彼女=v」


と声を合わせて言った。


「それがどうしたんだよ」
「だーかーらー、昨日、転校生が来たんだよ」
「は?転校生」


全く知らない。


「んで、式で紹介されたんや。何でも、跡部に続く金持ちやねんて」
「しかも、帰国子女だってよ」
「……またえらいお嬢さんが来たもんだな」


こいつらが騒ぐわけだ。


「ふつう金持ちって、跡部みたいに性格悪いの想像するんだけどよ、そいつは全っ然ちげーんだよ」
「一目見て分かったわ。この子は心優しい子ーやてな」


忍足の客観的意見は知らねーが、あの文句の多い岳人までが言うんだ。
雰囲気はそうなんだろう。


「……で、何でその転校生が噂の彼女≠ネんだよ」
「その子な、俺の好みの女の子やってん」


お前の好みなんか聞いてねえ。


「その転校生、めっちゃくちゃ綺麗なんだよ」


岳人が忍足を払いのけて言った。


「だから、一瞬にしてそこら中の奴等が噂し始めてよ」
「一日で学園の人気独り占めや」
「………」


嫌な奴では無さそうみたいだが、俺はそんなのどうでもいい。


「生憎俺等のクラスとは別やねん……。あ、確か跡部と同じクラスやったかな」
「クソクソ、羨ましいぜっ」


二人は嘆いた。


「だから、一目お前にも会わしてやろうと俺等が計画立てたわけ」
「は?」
「宍戸も、今はどうでもよさそうな顔しとるけど、見たらイチコロやで?」


忍足の言葉はともかく……。
そこまでこいつらがベタ褒めするなんてな。
少し、見てみたい気もするな……。





耳に残る誰かの噂
(一体どんな奴なんだ……?)