静かな部室。
ふぅ、と下を向いて呼吸を整える。
すると、

ガチャ…。


「!」


アタシはばっと前を見た。
そこには…。


「……日吉?」


日吉は何も言わず、ゆっくりと澪≠ノ近づく。


「何よ。また殴りに来たの?」





日吉side



澪先輩からは信じられない程冷たい言葉。


「…本当に、澪先輩…ですか?」


言うと、一瞬澪先輩の動きが止まった。


「……何故、そう思うの?」


…否定しないんですね。


「…貴女のその口調、澪先輩とは違う。後は…雰囲気ですよ」


特に何も表情を浮かべずに話した。


「ふふ、さすがね日吉。伊達に澪のこと見てたんじゃないのね?」


クスクスと俺の前の澪先輩が笑う。
その表情は、もはや別人を思わせる。


「……?」


一瞬眉根を寄せた俺に気付いたのか、澪先輩は笑いを止め、


「アタシのこと、覚えてるでしょ?」


微笑みながら俺の頬を触る。
……もしかして。
口調も、なんとなく似ている。
この人は…。


「…麻央…さん…?」


だが、雰囲気は少し違う。


「ビンゴ」
「……っ!何故…っ「復讐する為よ」


その一言に、俺の動きが止まる。


「澪は、あれ程流さなかった涙を…流した。あんた達のせいで…。絶対に、許さない」


最後の言葉を強調して言っている。
麻央さん≠ヘ本気だ。


「……貴女は、それで満足なんですか?」
「ええ。澪を傷つける者は、誰であろうと許さない…っ。だから、澪の身体を借りたの」


すると、麻央さんは少しよろめいた。


「…っ、麻央さん…?」
「…っ、まだ…お手並み、拝見よ…復讐=cは、これ、…から。アンタ…も、動か…ないと、ほん…とに敵……」


だんだんと麻央さんの目が虚ろになり最後には、俺の胸に倒れた。
しばらく黙って支えていると、急に先輩の肩が震え始めた。


「……っ、わ…かっ、…わか…」


ああ、戻ったんだ…澪先輩に…。
澪先輩は、俺の事をわか≠ニ呼ぶ。
俺は少し安心した。


「…澪せんぱ「私…っ」


俺の言葉は、澪先輩の言葉によって遮られた。


「私…皆に、信じてもらえなくて…っ、麻央との、約束、守れなくて…っ、存在を、否定されて…っ、私が、いつまでもはっきりさせないから…、麻央が、戻ってきちゃった…っ」


今までの澪先輩とは思えないほど泣きじゃくって話している。
それにも驚いたが、他に、はっきり=c約束=c?
一体、何なんだ?


「でも…っ私も、このまま…っ、なのは、嫌、だからっ、麻央に…頼るしか…それしかっ、できない…。ごめ…っ、ごめ…ね?わか…っ」


何故、貴女が謝るんですか?
悪いのは、俺たちなのに。



「……っ」


壁にもたれていた男が下唇を噛みながら去っていった。



その後、澪先輩は意識を失ったので、俺は家まで送っていった。


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