貴女の魅力の凄さは、私も理解していた。

貴女には、人を変える力がある―――





栞side



「……そして、中学。私は氷帝にやってきた」


前の学校とは離れた場所にある学園。
幸いにも、小学校での知り合いは居なかった。


「……確かに、栞の事は…マネになるまで気付かなかった……」


そう呟く岳人。
中学にあがったとして、性格が変わるわけでもないから。


「……中学2年に進級するまでは、同じように静かに……人と関われずに過ごしていた。でも……」


私は、未玖を見る。


「……2年生では違った……」





家庭での生活も変わりなく、中2を迎えた春。
自分のクラスは何処かだけを見て、すぐにその場所へ向かった。
そして、その前の席が……、


「よろしくっ、私、古瀬未玖っていうの!」


未玖だった――――


「………」


相変わらず返事をしない私。
そして、話しかけた相手は呆れてどこかに行ってしまうのが普通だったのに。
貴女は違った。


「えっと……栞ちゃん、だよね?」


私の名前を確認し、笑顔で話を続けるのは貴女が初めてだった。


「……ちょっと、未玖」
「ん?何?」


他の子たちが、こっちまで来て、


「やめなよ。この子、何を言っても返事をしないのよ」
「そーだよ。友達も居ないし……」


未玖に、私から離れるように言っていた。
すると、未玖は……


「じゃあ、私が栞ちゃんのお友達第1号になるっ!」


私には、ただ眩しいだけの笑顔でそう言った。
……私が呆れるくらいだった。
どうして、こんな私に?
なんでそんなに関わろうとするの?


「……もう、未玖ってば…」


普通なら、嫌いな子と関わろうとする子まで嫌いになりそうだけど、やっぱり未玖は違った。


「しょうがない。未玖に免じて、私たちもお友達ごっこに付き合うよ」


それは嫌味だったのかもしれない。
でも、未玖にはそんな力があった。
決して人に嫌われない魅力―――


「なら、今日からよろしくねっ、栞ちゃん!」


それが、私の嫉妬を買った。
羨ましい、という気持ちを私に抱かせた。
貴女の幸せを見ると、壊してしまいたくなる。
だって、本当に私とは世界が違うみたいで。

私の幸せまでもが、貴女に向かってるみたいで――――
貴女の不幸が、私に全部降りかかってるみたいで――――

何も知らない、貴女の純粋な笑顔を見ていると。