人が人を傷つける理由は、決まってる。

嫉妬。
優越。

でも、心の中で想ってる事は
決まってない―――





No side



「栞、ちゃん………」


栞が近づくと、やっぱり少し怯えた表情を見せる。


「……未玖…」


栞も、マットに腰を下ろす。
ゆっくり、未玖を見て、


「……生きていてくれて、良かった……」


そう、呟いた。


「っえ……?」


未玖は、驚いたように栞を見つめる。


「……今まで、辛かったでしょう?……本当に、ごめんなさい……」


前までの雰囲気が消え、か弱くなってる栞。


「……私、羨ましかったの。いつも……クラスの中心にいる貴女が。とても」


未玖に微笑むのは、初めてに近かった。


「私、が……?」
「そう。そして、妬ましかった」


そこまで言うと、未玖は自分が虐められた理由がはっきりした。


「……そう、だったんだ……」


栞から視線を外し、俯く未玖。


「……っでも、どうしてあそこまで……」


未玖は、ぎゅ、と自分の服を掴んだ。


「あんなに傷をつくったりしてまで……、私を虐めようとしたの……?」
「………」


栞は、黙った。
そして、幸村が少し口を挟んだ。


「……それが、今回の件の、塚原さんにまとわりついてた重い鎖だよ」
「……幸村くん」
「…自分で、話せる?俺が話そうか?」
「……大丈夫。自分の事は、自分で……」


そうすると、胸に決意を込めて、


「……言い訳がましく聞こえるかもしれないけど、皆さんも聞いてください」


氷帝、立海を見て、最後に未玖を見る。


「……未玖、これはね、私が自分で付けた傷じゃないの」
「……え…?」
「勿論、人に頼んでも無い。……これは、本当に傷つけられたもの」


腕の傷を眺めて言った。


「……じ、じゃあ…誰に……」
「……私の、実の父親に」
「「「……!?」」」


その言葉には、幸村以外の全員が驚きを隠せなかった。


「……栞…、今、何て……」


忍足が問う。


「…この傷は、実の父親に付けられた傷」


栞は深く息を吸って、話し始めた。