さようなら、大好きだった皆―――





ゆっくりと、あの頃の感触を感じる。
あの時、堕ちる時も、こんな感じだった……。
上へ昇るようなこの気持ち。
これで本当に……終わった―――





No side



「っ未玖……!」


何人かが、その場に座り込んでしまった。
誰も、屋上の下を見ようとしない。
否、見たくないんだ。


「未玖…っ未玖……」


何度も何度も、名前を呼ぶ。
また同じ過ちを繰り返してしまった。
後悔が全員を襲った。

ボスッ。


「「「!?」」」


その時、何やら変な音がした。


「……何だ…今の音は……?」


真田が眉を寄せた。


「……未玖さんが…下に到達した音……でしょうか…?」
「……いや、下が芝生やとしてもこんな音にはならん……」


全員が、不思議に思っていた。
が―――


「!?っおい、下を見てみろよっ!」


向日がいつの間にか下を覗いていた。


「っ岳人!自分……!」
「いいからちょっと見てみろよっ!」


向日の手招きのする方へ皆も寄った。
すると……


「「「っあれは…!!」」」


下には、白い、大きなマットに包まれている未玖の姿があった。
どこも、血がついた形跡は無い。
それどころか、未玖の身体に傷がついていないことも分かるくらいだった。


「とりあえず、下に行ってみようぜっ!」


屋上から下へと向かった。
未玖が生きているかもしれない。
息を切らすほど、全力で。


「「「っ未玖!!」」」


全員が下に行くと、そこには……。


「……どうやら、準備をしていて正解だったようだね」
「…ああ、そうだな」
「……間に合った…」
「…………」



額に汗が浮かんでいる幸村と跡部と日吉。
それに、身体を抱えるようにして幸村の後ろに立っている栞の姿があった。


「っお前たち…!」
「…真田。遅くなってすまない…」
「跡部…日吉…自分ら……いきなり『先に行け』言うたと思うたら……」
「……まぁな」
「…幸村さんに手伝ってくれ、と言われたので……」


全員が幸村を見る。
……正確に言えば、栞を見ていた。


「……お前、未玖の前に姿を見せるなよ…」


宍戸が恨みのこもった声を放った。


「………」


栞は、何も言わない。


「…貴女の所為でまた、未玖さんがこんなことに……」


幸村達がマットを用意しなかったら、危なかっただろう。


「……皆、そう、塚原さんを責めないでやってくれ」
「っ何言ってんスか幸村部長!」


切原が叫んだ。


「この女がっ、未玖さんをここまで追い詰めたんスよ?なのに黙ってられるわけないじゃないッスか!」


それは、他の皆も同じだった。
皆の視線が栞へ集まる。


「……。赤也の言いたい事、よく分かるよ」


幸村は、深呼吸をして、


「……でも、それ以上に、皆に言いたい事があるんだ」


静かに言った。


「……なんだよ、それは」


跡部が問う。


「………氷帝の皆も、未玖も知らない、塚原さんの事―――」


塚原の、自分を抱える強さが強くなった。
暖かな風が吹いている。

また話されるのは、暖かさを失ったお話―――