また。
こんなことになってしまうなんて。

自分が大嫌いだ―――





「はぁっ……はぁっ…!」


気付いたらパジャマ姿のまま飛び出していた。
さっきの会話で……全て、分かった。





「知ってない……?」
「うん。なーんにも」


この子は誰?
この、意地悪そうに、笑ってるのは、私の知ってる栞ちゃん?


「ど…いうこと?」
「じゃあまず初めに……私、あんたのこと大嫌いなんだ」


私は一瞬理解できずに、頭が真っ白になった。
私の事……大嫌い?

「アンタが大嫌い。だから、こういうことをするの」


「っ……」


頭が痛い。
鼓動が早くなる。
今の声は何?


「それと…私、虐められてなんかないし」


指を口に当てて、まるでドッキリを明かすように楽しそうに言った。


「え…っ?で、でも……その傷……」
「くす、知らないの?傷って、自分で付けられるのよ?」


今でも、腕の傷……紫に変色した痣が見える。
それを、自分で付けたの?


「この傷……懐かしくない?いつも、貴女は傷だらけだった……」


私の腕を取り、ゆっくりと袖をまくった。


「……っ!?」


今まで気付かなかった。
それは、もう色が薄かったから。
でも、よく見ると。
痣の痕がたくさん―――


「…っ!!」


「お前、最低だな」
「こんな奴だったなんてな」
「うぜえ」



「あっ…う…っ!?」


次々と浮かび上がる棘のある言葉。
一体何なの?
どんな言葉なの……?


「私は、過去を再現させてあげただけよ?……貴女の、過去を」


私の――――

「違うっ!私じゃないっ…」
「嘘付け!」
「っ…嘘…じゃないっ…」


悲痛な叫び声。
これは、全て私の声?


「貴女は虐められていた。テニス部を中心に。氷帝学園から」
「っ―――」


氷……帝……?


「っそん、な…!」


「……俺たちの前に現れるな」
「嫌いやわ。ほんまに」
「俺たちの邪魔すんじゃねえよっ!」
「…最低だな」
「……見損ないましたよ」
「もう俺に近づかないでね…」
「ここから出て行ったらどうですか?」


聞き覚えのある声。
昨日まで、笑って私に話しかけてきてくれた―――


「っみんな……っ!?」
「……思い出した?」


栞ちゃん―――


「っ!」


私は……騙されていた?
栞ちゃんに?
栞ちゃんの目を見た。
笑っている。
妖しく。


「っや…だ…」


だったら、さっきの私の言葉は……。

「っ……栞ちゃんを虐めてたのは本当なのね……っ?」
「っとぼけないで……ずっと、信じてたのに……」
「近づかないでっ!!」
「いや!いやっいや!信じてたのにっ…酷いよ……っ」
「出てってっ!!」


――――最低だ。
私は、こんな事を言ってしまった。


「氷帝の人たち……傷ついたでしょうね?」


傷ついた……。
私が、傷つけた……。

「最低だな」

ま た 嫌 わ れ た ?

そう思うと怖くて。
一瞬のうちに駆け出していた。
さっきの事を後悔して。
嫌われた。
また。

……私って本当に……酷い……。