お願いだ。
俺たちの言葉を信じて。

俺たちの心を―――





宍戸と鳳は走っていた。
無我夢中で。
一人の少女を、悪魔の囁きから逃す為に。


「っ…こ、ここか……っ!」
「そ、そう…みたいです…!」


立海大付属中。
二人は、テニスコートまでまた走った。


「っ…お、おいっ!立海っ!」


宍戸の叫びで、立海は不思議そうな顔で二人を見た。


「っ…未玖、さんがっ…!」


続いて、鳳の声で血相を変えて走ってきた。


「っ未玖がどうかしたのかっ!?」
「く、詳しい話しは後ですっ!早く来てくださいっ!」


急いで立海を病院に連れて行った。
その途中で、二人は立海に説明していた。


「では、我々の知らない間にその塚原という奴と接触していたというわけか…!」
「ちっ……全然分かんなかったッス…」


自分たちも、未玖の様子に気づけなかった。
誰の心にも、後悔がある。
そして、気持ちが一つとなった。

未玖、どうか無事で―――





一方。
幸村と氷帝は、未玖の病室に向かっていた。


「未玖っ……」


どうか、悪魔の囁きに耳を傾けないで。
全員が、それを願っていた。


「はぁ…っ」


目の前には『古瀬未玖』と書かれたプレートの病室。
少しだけ呼吸を整え、
勢いよく、幸村がドアを開き―――





「ふふ……ははっ……」


狂気的に笑い、一人立っている塚原の姿を見た。


「っ!?未玖…?」


跡部が未玖の姿が見えないことに気付く。


「っ、おい!未玖はどこにっ…!」


向日が塚原に突っかかった。


「……久しぶりね、岳人」
「っ……」


話の通じていない塚原に、向日は突っかかるのを止めた。


「…塚原、未玖をどこにやったんや……?」
「ふふ…知らない。……ただ、凄く泣き叫んでたよ?」
「それはてめーの所為だろっ!」


跡部までも声を上げる。


「…でも、元はといえば貴方たちが愚かだったからじゃない」


淡々と塚原は言う。


「「「っ……」」」


氷帝は何も言い返せない。


「……ねえ、君。未玖はどこに行ったの?」
「…あら、立海の部長さん?さっきも言ったけど、知らないわ」


クスクス笑いながら言う塚原に、幸村は少し怒りを抑えて、


「……教えてくれ」
「……ん〜、じゃあ、ヒントあげるわね」


あくまで、ゲーム感覚で言うように、


「未玖は、記憶を取り戻したみたいよ?」
「「「なっ…!」」」


氷帝は驚愕した。
未玖の記憶が戻っている?


「それと、未玖の性格をよく考えたら?」


そこまで聞くと、幸村は何か気付いたようで、すぐに携帯を取り出した。


「真田?……今すぐ、氷帝に向かってくれ」