どうして気付けなかった。
どうしておかしいと思わなかった。

悔やんでも悔やみきれない。
後悔の波が押し寄せてくる。

……未熟な俺たちを誰が許してくれる―――





「っ未玖―――」
「来い、宍戸」
「っ跡部……!」
「いいから来い」


未だ扉に向かって叫ぶ宍戸に、跡部は離れるように促した。
そして、待合室まで足を運んだ。


「どうしてだよ、跡部!中には塚原がっ」
「……今行ったら、余計未玖を傷つけることになる」
「……どういう意味ですか?跡部さん」


どうやら、塚原の顔を見たのは跡部だけのようだ。


「……俺たちは、あいつの罠にまんまとはまったんだよ」
「……罠?」
「ああ。……多分、塚原は、密かに未玖に会ってた。そして、『氷帝テニス部に虐められてる』とでも言ったんだろう」
「っなんで……」
「……姿を消した思うたらそんなこと……」


忍足が拳を握った。


「っ未玖が、塚原と会ってた……?」
「だったら、何でそのこと教えてくれなかったの?」
「……言えるかよ。塚原は、俺たちに虐められてるって言ったんだぜ」


全員の表情が険しくなった。


「っよくそんな嘘をつけますね……」


日吉がギリ、と歯軋りをしながら言った。


「……でも、今未玖さんが……っ」


こういう時、俺たちは動けない。


「………立海んとこ行くぞ」
「……跡部」
「もう、ここから俺たちは何も出来ない。今のところは立海に……」


そこまで言うと、皆は一目散に幸村の病室へ向かった。





幸村side



未玖と離れてから、まだ30分位しか経ってない。


「っ幸村……未玖が―――」


跡部から聞いた言葉は最悪なものだった。
未玖と塚原が接触していた――

嗚呼、何故俺は気付けなかったんだろう。
何で最後まで尋ねなかったんだろう。
未玖は、苦しんでいたのに。


「……!!」


そういえば、あの時。



「………ん?あれは……」


診察室から出ると、一瞬だが、氷帝の制服を見たような気がした。
勿論、女の子の。


「………まぁ、居てもおかしくはないよな」




「っ!」


もしかしたら、あれが。
あれが、塚原だったのかもしれない。


「……っ」


俺は何で気付かなかったんだ。
どうして、疑わなかったんだ。


「………幸村」


頭を抱えていると、跡部の声が聞こえた。


「……頼む、未玖を助けてくれ」


そんなの、答えは決まってる。
自分で決めた。
未玖を一生守る。


「……立海の皆を呼んで来て」


言うと、宍戸と鳳がすぐに動き出した。

未玖、どうかお願い。
あいつに呑み込まれないで。
どうか俺を信じて。
俺の言葉を信じて。
俺たちは、ずっと未玖の味方なんだよ。


どうか、忘れないで―――