何て言ったらいいの?
何て声をかけたらいいの?

ごめんね……
私はどうすることもできないの―――





あれから、精市とまったりした時間を過ごした。
久しぶりだな。
こんなに安心感を感じたのは。


「……なんでだろ」


急に、一人になったのを寂しく感じた。


「……退院したい」


もう、どこも悪くないのに。
怪我だって、もう痛みを感じない。

コンコン。

そう思っていると、ノックが聞こえた。


「……?」


誰だろう。
精市?氷帝の皆?
いや、違う。


「未玖……ちゃん?」


栞ちゃんだ。
栞ちゃんは、扉を開けて入った。


「栞ちゃん……どうぞ、座って?」


今日も、私に会いに来てくれたみたい。
……あれ?


「栞ちゃん、今日は氷帝って練習試合じゃなかったの?」


練習試合でも、マネージャーには仕事があると思うんだけど……。


「………私、必要とされてないから……」
「っ……」


俯いて言った。
私、余計なことを……。


「……ごめんね…」
「ううん。いいのよ……」


だめだ。
私は、こういう時何を言っていいのか、分からない。





栞side



「……私ね、部活の時間になったら、必ず呼び出されるの……」


もちろん、嘘。
私が呼び出されるわけないじゃない。


「………」


一言言って、未玖の顔を確認する。
あんたが何を思っているのかなんて、お見通しよ。


「それで……『仕事をしてない』って言われて……」


そう。
いつも、あんたは言われていた。


「全部っ……樺地くんがやってるって……」


ここで、また涙を零す。
そうすれば、


「っ栞ちゃん……」


あんたは、悲しそうな顔をして私を気遣う。
少し同情も混ざってる。
本当、皮肉よね。
私が氷帝の皆に使った手で、あんたも同じように騙されるなんて。
所詮はこんなもの。誰も人を信じようなんて思っていないの。


「……っう……ひっく……」


泣き出すと、あんたはどうしていいか分からない顔になる。
それもそうよね?
あんたは、こっち側だったんだから。


「……あの、ね、栞ちゃん……」
「ん……?」
「氷帝の皆がね、練習試合が終わったらここに来ちゃうの……」


私は下を向いて泣き真似を続ける。


「だ、だからね……今、ここに居たら……」


氷帝の奴らと接触するって?
いいのよ。

今日は、本当に壊しにきたんだから。





未玖side



今、氷帝の人たちに会ったらいけない。
必死に考えた結果。


「は、早く帰った方が……」
「っいや……。今日だけは、未玖ちゃんから離れたくない……っ」


私の服を掴んで離さない栞ちゃん。
その手も震えて、少しパニックになってしまっていることが分かった。


「っでも……」
「いやっ……いや、いや……っ!」


何度も繰り返す。
だんだんと、私まで泣きたくなってくるくらい、見ているのが辛い。
少し、他人事だと思っていた面があったのかもしれない。
私にはどうしようもできないと諦めていた面があったのかもしれない。

こんな時、どうしたらいいのだろう。

コンコン。


「っ……」
「俺たちだ。今練習試合が終わった。……開けるぜ」



来た。