無理だよ。
こんな事を聞いてしまって。
普通に接するなんて。

……そんなの―――





「……ごめんね、いきなり……」


あれから、十数分経って栞ちゃんはようやく落ち着いた。


「……未玖ちゃんには、こんなところ見せたくなかった……」


悲しそうな顔をして言う栞ちゃん。


「……ううん」


私の口から出たのは、それだけだった。
何を言えばいいのか。
栞ちゃんを、救うには……。


「……私、ね……もう本当に嫌だ……。疲れたの……」


弱々しく、呟いた。


「……栞ちゃん……」
「でも、ね。唯一の救いが、未玖ちゃんなの」
「……え?」
「未玖ちゃんは、私の一番の友達だもの。……未玖ちゃんが居てくれれば、私は大丈夫」


微かに、笑った。
でも、辛そうに。


「……未玖ちゃん。氷帝の人たちも、本当は優しいんだよ?」


ゆっくり、言った。


「………」
「……きっと、私が何かしちゃったんだよ……っ」


再び涙が溢れそうになる栞ちゃんに、私はハンカチを渡した。


「……ありがとう」


それを、嬉しそうに受け取った。
こんな優しい子が、一体何をしたっていうの……。
例え何かをしたとしても……こんなになるまでしなきゃいけないこと、なのかな……。


「……ほんとう、に……皆が……」
「……未玖ちゃんにとっては、辛いことかもしれないけど……。これが、本当なの……」


寂しそうに、栞ちゃんは言った。


「………」
「……でも、ね?未玖ちゃんには、こんな思いして欲しくないの。だから、氷帝の人たちとは、今まで通りに接して……?」


優しく、私を見つめてくれた。
まるで氷帝の皆みたいに。


「……栞、ちゃ……」
「私、もう帰らなきゃ……。いつまでも、未玖ちゃんに迷惑はかけられない……」
「あ、待っ……」


栞ちゃんは立ち上がるとすぐに病室から出て行った。


「……本当なの?皆……」


口からは、そんな言葉が出る。
でも、心では……

そんな事をしてたんだ。
私に嘘をついていたんだ。
私の友達を……虐めていたんだ。


その確信が、駆け巡っていた―――