恐怖を覚えた。
あの優しかった、皆が……。

ねえ、
何でなの―――?





立海の皆が帰ってから数分。
ドアをノックする音が聞こえた。


「はい、どうぞ」


言うと、すぐにドアが開き、見覚えのある姿が飛び込んできた。


「……栞、ちゃん……?」


そう、それは栞ちゃんだった。
でもいつもと違う事があった。


「うっ……未玖、ちゃ……」


栞ちゃんは部屋に入るなり自分を抱き締めるようにして震えていた。
それに泣いている。


「……っ、どうしたの?栞ちゃん……」


聞いてみるけど、本当は見当がついていた。


「っテニス部の、皆が……っ」


やっぱり。
また、栞ちゃんは何かされたんだ。


「何か、されたの……?」


私の声も震える。
なんだか、凄く怖い。聞きたくないとさえ思ってしまう。


「………っ」


しばらく、栞ちゃんは私の腕で泣いていた。


「……こ、れ……」


そして、私に手足を見せてきた。


「っ……!」


そこには、物凄い数の痣や傷があった。
見るだけでも痛々しさが伝わってくる。
暑い時期なのに長袖、スカートも長く、靴下もハイソックス。
それらは全て、この傷を隠すためのものだったんだ。


「……ま、さか……全部……?」


聞くと、こくんと弱々しく頷いた。


「……なん、で……っ」


何で、栞ちゃんが。
どうして、こんな優しい子が。
私のお見舞いに来てくれた、唯一の女の子。
どうして―――


「っ、もう、嫌……っ」


栞ちゃんは未だに震えて泣いている。


「………」


私は、何も言えなかった。
言葉が見つからなかった。
こんな時、どんな声を掛ければいいのか。


「……私、もう嫌だよぉ……っ」


ゆっくり、顔を上げた。
そして――


「テニス部のマネージャーなんて、疲れた……っ」


―――え?
栞ちゃんが?
テニス部のマネージャー?


「え……?」
「うっ……未玖ちゃんが、入院してから、私、一人でも頑張ってっ、きたのに……」


そんなの、聞いてない。
だって―――

「未玖が入院してから、ずっと樺地がドリンクとか作ってくれたもんね〜」
「……氷帝のマネージャーは、未玖だけだC〜……」


あの言葉は、何?
テニス部のマネージャーは、私だけじゃなかったの……?
もしかして。
氷帝の皆が、嘘をついている――?
そして、栞ちゃんを虐めている?


「も……やだ……っ未玖ちゃん、助けて……っ」


私の腕を掴んで、助けを求める栞ちゃん。
こんなになるまで、氷帝の皆は栞ちゃんを傷つけたの?
今までの私に向けてくれた優しさは、偽りだったの?
本当は、こんな事をしていたの?


怖い――――