私は、皆を信じたい。

それは、無謀なこと―――?





「ふふっ」
「お、何か機嫌いいみてぇだな」
「何かいい事でもあったんスか?」


今日は立海の皆がお見舞いに来てくれた。
氷帝では、今日は練習試合があるみたいで、お見舞いはなし。


「ふふ、何でもなーい」


あれから、少し機嫌が良い。
初めてお見舞いに来てくれた女の子、栞ちゃん。
私は、凄く嬉しくて、あの時の会話が忘れられなかった。
久しぶりに、女の子と話したから。
とても、楽しかった。
でも、


「……私……テニス部の人たちに嫌われてるの……」
「……今……学校で……あの人たちを中心に虐められてるの……」


勿論、あの言葉も忘れてはいない。
本当に、氷帝のテニス部の人たちが虐めをしているのか。
あの人たちは、虐めをするような人たちには見えない。
私に、とても優しく接してくれているんだもの。
栞ちゃんが来て、嬉しい反面、疑問や不安もまた増えた。


「……氷帝の皆とは、仲良くなった?」


精市が聞いてきた。


「……うん。大分打ち解けてきたよ」


記憶が無くても、大切な仲間には変わりないんだもの。
どんどん仲良くなって、少しでも早く皆のことを思い出したい。


「……そっか、それなら良かった」


私の答えを聞いて、精市は微笑んだ。
今では、皆の笑顔を見るのがとても嬉しい。


「……ねぇ、皆」
「?何ですか?」
「私、まだ退院できないのかな?」
「「「………」」」


確かに腕や足にも傷を負ったけど、普通に歩けなかったりするわけじゃない。
頭も、包帯も取れてもう何とも無いはず。


「……私、学校に行ってみたいんだ」


早く、失くした記憶を取り戻したい。
それには、やっぱり学校に行って、友達とお話をしたりするのが一番だと思う。


「……だが、怪我を甘く見てはならん」
「そうですね。……いきなり、激痛が走ったりしてしまうケースもありますし……」
「特に頭を打っているからな。安静にして経過を見るのも当然だ」
「……そっ……か」


まだ退院できないのか……。
はぁ。栞ちゃんのことも気になるのに……。


「氷帝の皆にも、いつも遠いところからお見舞いに来てもらうのも悪いし……」
「……未玖、今は、自分のことだけを考えてていいんだよ?」
「………そう?」


言うと、皆が頷いた。


「氷帝のメンバーだって、見舞いに来るの楽しみにしとるんよ」
「へぇ……そうなんだぁ」


嬉しいな。
そうやって、思って来てくれるなんて。


「……あ、皆、時間だよ」
「む、本当だな……。それでは、遅くなる前に失礼させてもらおう」
「そうだな。未玖、それではまたな」
「また明日も来るぜぃ」
「うん。待ってる」


そうして、皆が出て行った。
また、沈黙の時間が流れた。

コンコン。

扉を叩く音が聞こえた。
もしかしたら……。


「は〜い、どうぞ〜」


扉が開かれ、入ってきた人物は、やはり栞ちゃんだった。