あんたの恐怖は、
私にとっての快感。

あんたの悲劇は、
私にとっての喜劇。

もう一度、幕を開けましょう?―――





?side



「……ふふ。見つけた……」


誰にも信じてもらえなかった、哀れな子。
独りぼっちだった子。
頼る人も、信頼できる人も、いなくなってしまった子。

やっと見つけた。
あんたの所為で……私は……。



今は、記憶を失ってるみたいね?
取り戻したいでしょ?
思い出したいでしょ?
中学での出来事。
何があったのか。
誰が、何をしたのか。
どんな目に遭っていたのか。
隅々まで……鮮明に。

私が、思い出させてあげる。
拒否なんてさせない。
私は、もう前には戻れない。
だったら。
今の、あんたの幸せをぶち壊して。
前の……
恐怖で歪められた顔。
震えの止まらない体。
反抗なんてできない。
拒絶なんてできない。
ただ、怯えて見上げるだけの瞳。

その姿を、もう一度見せて?
そうじゃないと、私は幸せになれない。
あんたが、笑っているだけで
私の全身が疼く。

ぶち壊したくて、しょうがない。


もう一度、独りになりたいでしょ?





未玖side



ある日の事。
今日は、忍足くんと芥川くんがお見舞いに来てくれた。


「未玖、大分調子良くなってきたね」
「ああ。顔色もようなったで」


もう結構打ち解けてきた。
私も、普通に話せるようなってきた頃。


「ねぇ、忍足くん、芥川くん」
「何や?」
「どうしたの?」


ふと思った疑問を、口にしてみた。


「どうして、他の子はお見舞いとか来てくれないのかな?」


そう。
まだ、テニス部以外の人はお見舞いに来ていない。
もう、入院して2週間以上経つのに。


「「―――っ」」


私にだって、女の子の友達くらい居るはず。
それだったら、一回くらい来てくれてもおかしくないよね。


「……何で……かな?」


すぐに答えは返ってこなかった。
二人は私から目を逸らした。
そんなに難しい質問だったかな……?
ますます、私の中の疑問がふくらんだ。

ねぇ、答えてよ―――