分からない。
一番、大事な人物が。

この、原因となった人物が―――





跡部side



prrrrrrrr

電話が鳴った。
相手は、幸村か……。


「……もしもし」
『跡部?ちょっと、話しておきたい事があって……』
「何だ?」
『……未玖を、虐めてた子……塚原っていったっけ』
「……ああ、そうだが……」
『その子、学校に通ってる?』
「!?……いや」


通ってるも何も……あいつは――――消えた。
未玖が飛び降りたという事実が学校全体に広まった時。
忽然と姿を消した。
どこにいるか、分からねえ。


『………そう』
「何か、あったのか?」


いきなり、あいつの事気にするなんて。


『……氷帝の、皆に伝えてくれる?』
「………ああ」
『今、未玖は凄く迷ってる。氷帝の態度について』
「………」


態度?
……確かに、あいつらは行動に少し迷いがある。
未だに自分たちが未玖の記憶の中からいないということを受け入れられていない奴もいるだろう。
でも未玖に、罪悪感を抱いている。そのため、最大限に気を遣っている。


『未玖はね、気付いているんだよ。身体が、覚えてる』
「………」


……身体が、か……。
そうだよな……俺たちは、それだけ卑劣なことをしてきたんだ。
傷は簡単に消えねえ……。


『だから、発言には気をつけて。態度も、普通にするように』
「……ああ、伝えておく」


明日は、岳人と日吉だ。
……岳人は心配だが、日吉が居るなら大丈夫だろう。


『……それじゃあね』


そう言って、電話は切れた。
凄く、声が暗かったのが印象に残った。





幸村side



やっぱり。俺の想像通りだった。
未玖を虐めた子は学校には行っていない。
それは、どうしてだろうね。
罪悪感?反省?
いや、違う。
きっと、まだ終わらない筈だ。

俺も、終わらせる気は無い。
……これも、未玖の為。
考えると辛いけど……。

未玖の、為―――