優しさは、時に誤解を招く。
親切は、時に疑わしい。

それが、不安定な者への言葉なら―――





「未玖……大丈夫かよ……?」


二人が出てった後、ブン太が私の顔を覗き込んで聞いてくる。
他の立海の皆も心配してくれたのか私の周りを囲んだ。


「……うん、大丈夫」


皆が来てくれたのは嬉しい。
でも、どうして?
立海は、もう少し後に来てくれる予定で……。


「少し、未玖が心配でな」
「……心配?」
「ああ、未玖は自分で考え込んでしまうからのう」


そうか、だから皆、来てくれたんだ……。
あ……。でも、宍戸くんと鳳くんには悪かったかな……。
折角お見舞いに来てくれたのに、そんなに話とか出来なくて……。


「後で、二人には謝るから。心配しなくて大丈夫だよ」
「あ……ありがとう」


優しく笑う精市の微笑。とても安心できる表情だ。
精市が言うのなら大丈夫だと、私は素直に頷いた。


「……未玖は、記憶、取り戻したいか?」


いきなりの雅治からの質問。


「え……う、うん。氷帝の皆が心配してくれてるし……」
「未玖自身の気持ちはどうなんだ?」
「……え?」
「氷帝がどうとかではなく、未玖が思い出したいかを聞きたい」


私が、思い出したいか……。

「忘れられない程、頭に焼き付いてる……」

宍戸くんが言った言葉。
そんな風に、言ってくれるなんて。
前の私とのことを……。
私は、思い出したい……。
氷帝の皆との、記憶を。

きっと、いい思い出に違いない―――


「……思い出したい。私の……大事な中学校生活の記憶だもん」
「「「……っ」」」


一瞬、皆の顔が悲しいものに変わったような気がした。


「……未玖、さん……」
「?どうしたの?赤也」
「……何でもないッス……」


何か言いたそうだけど、聞くと言うのをやめる。
最近の赤也は、こういうのが多いな。元気がないのかな……。


「……きっと、いつか記憶は戻るでしょう」
「……うん」


比呂士の顔が、泣きそうだった。
何でだろう。
皆の視線が、下に落ちていた。
何か、変な事言った……?


「……皆?」
「……あ、ああ。何でもない」


おかしい。
蓮二も、いつもの冷静な雰囲気がない。


「……もうそろそろ、帰る時間じゃないか?」


そして、話題を変えるように言う精市。


「む……。そうだな。これ以上居ては迷惑になるな」
「……また来るぜよ」


逃げるように帰って行く皆。

皆……何か、隠している―――?