……そうよ、私の所為よ。

でも、
あんた達に言われる筋合いなんて
これっぽっちも無いわ―――





「久しぶりに学校に行くと……もう、私と織との事は全校に広まっていた……」





「………」


織の死は、自殺と報道された。
私がやったのではという疑いの声もあったが、物的証拠が見つからなかった。
だが、青学の生徒たちはその結論に納得していなかったみたい。
久しぶりに靴箱を見ると、大量に紙が出てきた。
どれも、同じ事が書いてあった。

『死ね』
『人殺し』
『消えろ』
『織くんを返せ』

最後の紙は……多分、織に気があった子が書いたんだろう。
……そんなの、私が願いたい。
織に会いたい。
会って、謝りたい。
もう遅いけど……それでも、織に謝りたい……。


「おい、蓮杖咲乱」
「………」
「ちょっとついて来いよ」
「………」
「っ早く来いっ!」
「っ!」


織と仲良かった人たちなのか、男女とも居る。
その内の一人が、私の腕を引っ張り、外へと連れ出した。


「っ……」


庭まで来ると、腕を引っ張ってた人が私を突き飛ばした。


「お前、織を殺したんだろ……?」


沸々と怒りが沸いているのか、静かに言った。
周りを見る。
全員、同じような表情をしていた。


「あんな、良い人を……」


女は、泣きそうな目で私を睨んでいた。


「……あんた達には関係ない」


私と織の何を知っているの?
織の何を見ていたというの?
……詳しく知らないくせに。
そう言われる筋合いは無い……。


「っ関係あんだよ!織は……こんなお前にだって……」


心配していた?
同情していた?
どれも、上辺の事でしょう?


「……それで、あんた達は何が言いたいの?」
「貴女の所為で、織くんは死んだのよ」


凄く恨みを込めた目で私を睨む。
私は、何も言わない。


「そうよ……貴女の所為」
「全部…お前が悪い」


次々と声があがる。


「なんで……っ織くんが……」


とうとう、一人の女が泣き出した。


「……お前が…お前が死ねば良かったんだ…っ」
「!?」


その言葉で、私は身体が波打ったのを覚えている。
私が死ねば。
その考えが、新しく私の頭を過ぎった。


「そうだ、お前が死ねば……」


私の頭を何度もリピートした。


「この……人殺しっ」
「人殺しっ!」
「……っるさい…」


私は耳を塞いだ。
それでも、『人殺し』という言葉は聞こえてくる。


「人殺しっ!!」


皆の悲痛な叫びが、耳を塞いでいるのに聞こえてくる。
……こんなに、織は信用されていたんだね。
ちょっとだけ、羨ましいと思った。


「うるさいっ!」


周りを囲んでいる人を掻き分け、その場から逃げるように去った。
そして、何故か……屋上に足が向いた。



「何で……。…私って、未練がましいのね……」


織が飛び降りたその場所。
そこで、私は下を見た。


「……織、今……私を見てる?」


遠くからでも、私の姿が見えてる?


「ここから飛び降りたら……織に会えるのかな」


少し、本気で考えた。
……織と、もう一度話がしたい。


「………」


下には丁度コンクリート。
織は、降りる時、この景色を見たのかな。
どんな気持ちだったのかな。
考えると、尽きない。


「……こんな所で思い出し笑いでもしたいのか?」


………来た。
いつものパターンを考えれば、絶対に来ると思った。


「3日程顔を出さずに居た。……そろそろ出てくる頃だと思ったよ」
「……よく、来れるッスね」


今は授業中のはず。
……リョーマは居ない。
他のレギュラーだけなのね。


「…あ〜あ。…このまま来なければ良かったのににゃ〜」


ふざけて言ってるみたいだけど、目は本気。
菊丸の座った目を見るのは何回目だろうか。


「………」


私は何も言い返さなかった。
でも
私は一人一人を睨んだ。


「………何、その目。人殺しのくせに」


言葉は痛くない。
でも………貴方には言われたくなかった。
冷たい目で、私を睨む人。