少し前まで、太陽を恨んでいた。

太陽は何時までも光り輝いて
その光で

惨めな私を照らすから―――





「一番辛いのが……無視…?」


話の途中、宍戸が聞き返してきた。


「……そうよ」


私は、静かに言った。


「…だって、罵倒や暴力は、そのものの存在がある≠ゥらできること。……空気に向かってそんなことやらないでしょ?」


言うと、氷帝は少し考えて、小さく頷いた。


「どうして無視が始まったのかは分からない。……織が言ったのか、分からない…」


私は、自分の視線が下に落ちるのが分かった。


「…無視をする…。存在がない≠ゥら罵倒や暴力はしない……。私の結論がそれだった」





「はぁっ…」


私が来たのは屋上。
ここが、今一番安らげる場所だった。


「……誰も居ない……よね」


一人になりたかった。
独りにはなりたくなかった。


「っ……なんで…」


あんな冷たい目で見たの?
せめて何か言ってくれれば……。
私は小さく蹲った。
太陽の光で、私を照らして欲しくなかった。


「―――おはよう、咲乱」


身体が波を打った。
反射的に、腕が震えた。
この声だけで、誰が、どんな表情をしているか分かった。


「どうした?そんなとこで小さくなって」


織の狂気に似た笑みが、ジリ…と近づいてくるのが分かる。


「……っやだ、来ないで…」


搾り出すように出てきた掠れた声。


「……お前、今自分の存在について考えてるだろ…」
「や…っ、やめて…」


身体中に悪寒が走る。
織は、近づくのを止めない。


「自分が存在していいのか、悩んでるんだろ?」
「っやめて!一人にしてっ…!」


刹那、織は笑って、



「お前は独りだよ」



くく、と笑ったのが聞こえた。


「お前は、初めから独りなんだよ」


初めから……。


「願わなくても、それが現実だ」


織は私の目の前で止まり、しゃがんだ。


「咲乱、……辛かっただろ?」


優しい声だったような気がする。
私は、少し顔を上げた。


「俺な…青学に来て、少しだけお前に感謝してる」


何をいきなり言い出すの……?


「お前の傷つく姿を見るのは、最高だった」


目を細めて言う織。


「お前が居なかったら」


真っ直ぐ、私を見た。


「こんなに楽しい事に出会わなかった」


本当に楽しそうな顔になって、立ち上がる。


「だから、な……?」


この瞬間。
私が冷静であれば、何とかできたんだろうか―――