心の中に溜まっているもの。
それが、やっと……。

明日には、楽になれる―――





「……もう、明日しかないんだ……」


部屋で一人、呟いた。
長くなると思った合宿。
終わりが近づくと、短く感じる。


「……明日……しか?」


明日も?
私は、どこかで明日を待ちわびてたかもしれない。
今まで胸の奥に溜まってたもの。
それが明日……全て吐き出される。


「………」


私はベッドに横になった。
天井を見上げるだけで、色々なことを思い浮かべる。
過去だけじゃない。
明日……未来のことも。


「……泣かないで、咲乱」


心の奥で私≠ェ泣いている。
未来が来るのを密かに拒んでいる自分が。
必死に、私に訴えてきてる。


「……だめよ。もう決心してるんだから」


だって、約束したもの。
私の中に残っている、忘れられない約束。
……いや、約束というより、運命の方が合ってるかもしれない。

……どちらにせよ
明日しかない―――





跡部side



合宿最終日がやってきた。
だが、この際合宿なんてどうでもいい。
今はテニスより、咲乱が大事だ。


「おはようさん」


少し広めの部屋に、氷帝が集まった。
忍足は真っ先に咲乱に声をかけた。


「……おはよう」


咲乱は元々低血圧なのか、朝は割と元気がない。


「…もう、合宿最終日ですね」


鳳が安心しているような、複雑な表情で言った。
……皆、その言葉で同じ顔をする。
俺も、はっきり言って安心するかは微妙だ。

俺の胸の中には、
咲乱を青学に二度と触れさせたくない。
青学に咲乱を認めさせたい。
その想いが、複雑に絡んでいた。


「……皆、そんな暗い顔しないで。合宿最終日でしょ?……テニス、思い切りやってきて」


まるで願いを言うように言う咲乱。


「……でもよ、」
「宍戸、テニス好きでしょ?」
「……あ、ああ」
「……なら、頑張って。……それじゃ、食堂に行こう?」


咲乱が促して、俺たちは食堂に行った。


「お、来たか」


食堂のドアを開くと、立海しか居なかった。


「……あれ?青学の奴等は?」


岳人が見回して言った。
いつもこの時間なら3校ともそろっているはずだ。


「……ああ、あいつらなら朝食は後になってるぜ」
「…?なんでだ?」
「なんでも、藤堂が体調を崩したらしい」
「……藤堂が?」
「ああ。今朝、ジャッカルが手塚の部屋の前を通った時に聞こえたらしい」


丸井がガムを膨らませながら言った。


「……そうなのか?桑原」
「ああ。それで、青学はそいつの看病をしてるぜ」


……ほんとに、どこまでそいつのことが大事なんだ。


「……それなら、今日の練習はどうするんですか?」


俺たちだけで練習をしてもいい。
だが、そしたら咲乱の負担が多くなる。


「……ねぇ」
「何だ、咲乱」
「……今日一日、私がもらってもいい?」


それは俺だけじゃなく、全員に聞いていた。


「……咲乱…」


幸村は察したように心配そうな顔をした。
……もしかして、昨日の続きか?


「俺等は勿論いいぜよ。咲乱の為ならな」
「俺もッス。咲乱さんを支えるッス!」


立海は即答だった。
だが、それに続いて氷帝でも声が上がった。


「俺等もええで。姫さんの話なら付き合うわ」
「俺もです。咲乱さん、話してください」


勿論、俺も気持ちは同じだ。
多分、青学は自分たちの階から降りてこないだろう。
それなら、俺たちが集まるのも好都合だ。


「……それじゃあ、朝食を食べましょ?」
「うむ、そうだな」


そして俺たちは少し早めに朝食を済ませた。
食べ終わってすぐ、部屋に向かった。

……今日で、咲乱の全てを知れるのか?
そしたら……俺たちも、咲乱を全力で守ることができるのか?
……俺は、絶対に最後までお前のことを―――