運命って、何だろう。
本当にあるの?

本当に……決まってることなのね―――?





「咲乱、会いたかったよ」


他の皆には分からない。
私だけに向けられた視線。


「蓮杖、こいつの兄貴なの?」


菊丸が聞いた。


「ああ。そうだよ。年子だけどね」
「……じゃあ、あんたも俺たちの敵になるんスか」


桃城がもう敵対心を持っている。


「……敵?何の話だ?」
「…お前の妹、蓮杖咲乱は、虐めをやっている」


部長が言った。
でも、そんなこと言われても、今の私には何も考えられない。
考えたのは一つだけ。
この状況が、今までよりずっと悪くなると言う事。
本能が告げていた。


「俺たちのマネージャーの愛美を虐めてるんだにゃ」


菊丸が私を睨んだ。


「……へぇ、そうだったんだ」


織は、少し周りを見渡してから、私を見た。


「……少しだけ、咲乱と話をさせてくれる?」


言った。
一瞬、私の中の時間が止まった。


「…だが、」
「部長。俺から注意しておくからさ」


少し笑った。
嘘の笑い。
織の得意な、作り笑い。


「……そうか。なら…「っやだ!!やめて……っ」


私は叫んでいた。
織と二人きりになりたくない。
絶対に、なりたくなかった。


「……お前の意見は聞いていない。皆、部室から出ろ」
「っ待って!行かないで…っ、おねが…っ!」


私は、初めて皆を引き止めた。
皆が私の言うことなんか聞いてくれないことはよく分かってた。
それでも、私は皆に縋りついた。


「っ、咲乱先輩……」
「越前。行くぞ」
「っ……ッス」


案の定、誰も足を止めてくれない。
リョーマも唇をかみ締めて、部室から出て行った。



「随分可愛がられてるみたいじゃん」


織が、妖艶に笑った。
心底、楽しそうだった。


「でも、な?俺の言う通りだっただろ…?」


そして、ゆっくり私に近づいてきた。


「っこないで……っ!」


私は後ろに下がった。
でも、すぐ後ろは壁だった。


「どうだ?皆に嫌われてる気分は……」


私は、ただ怯えた目で織を見上げるだけだった。


「何度も、訴えただろ?『自分はしていない』って。涙を流しながら、伝えたんだろ……?」


やけに言葉が響く。
言葉の一つ一つ、脳に刻み込まれるようだった。


「でもな……」


織は、しゃがんで私に目線を合わせた。


「誰がお前なんか信じるかよ」


ナイフで刺されたような衝動が走った。
普通に言われたのなら、こんな感覚はしない。
織の言葉は……やけに重かった。


「っ、どうして……!」


ここまでするの?


「お前の存在がうざいんだよ」


きっぱり、織は言った。


「っ……」
「……俺は、お前に幸せなんか見せてやらない。…一生、苦しめばいいんだよ……」


その時、初めて織の辛そうな顔を見たような気がする。


「……俺は、お前なんか大嫌いだ…」


最後に言い残して、織は出て行った。
私はしばらく、手足に力が入らなかった。
織の、表情。
言葉。
態度。

全てが、これからの出来事を物語っているかのようだった―――