誰とも関わりたくない。
関わりを持たない。
信頼なんてしない。

信頼なんて、
この世で一番……脆い…―――





放課後になって、私は目を覚ます。
はっきりしない視界で、私は自分の身体を見た。
金髪男はもうどっか行ったみたいで居ない。


「さて…行こっかな」


他の人と時間をずらしたつもりでも、やっぱり数人とは会ってしまう。


「あら?居たの?…消えたかと思ったのに」


消えれるのならとっくに消えてるわよ。


「ほんと。ま、跡部様から離れてくれればいいんだけど」


…なら必要以上に寄って来ないでほしい。


「それより、用事あるから通してくれない?」
「…相変わらず生意気ね」


何回も言われなくても知ってるわよ。
あんたに言われる筋合いなんてないわ。


「別にいいわ。二度と跡部様に近寄らないで」


それはちょっと無理ね。
…はぁ、面倒だけど、これからもっと関わらなきゃいけなくなるもの。
…まぁ、それも私の選んだ道…だけど。


「私に言うより、自分が積極的になればいいんじゃないの?」
「な…っ」
「それではさようなら、皆さん方」


私は一礼してその場を去った。
あら?また怒りを買ったかしら?
こっちとしては礼儀をしたまでなんだけど。





「…それにしても、うるさいわねぇ」


氷帝コール?とやらに眉を寄せながら部室らしき場所へ行く。


「…ここが部室なのかしら?」


どう見ても大きすぎるでしょ、これは。


「…とりあえず入ろう」


ノックをして入ると、跡部を中心にレギュラーらしきメンバーが居る。


「…やっと来たか…。今、こいつ等に話したところだ」
「……そ」


それにしてもホスト集団みたいね…人気があるのも分かる気がする。
周りなんて、どうせ顔だけで選んでる。
それにしても、視線が痛い。
そんなにジロジロ見て、楽しいのかしら?


「なんや、自分…蓮杖か?」
「…あんた、誰」
「……クラスメートの顔くらい覚えてや」


クラスメート…こいつが跡部の言ってた奴?


「興味無いし」
「俺…知ってるぜ。何か、問題児の」


おかっぱ…知らない奴に問題児なんて言われる筋合いないんだけど。


「ああ、俺も聞いた事あるぜ。確か、前に転校してきたんだよな?」


帽子…あんたも、私のこと知らないくせに私の過去なんて語らないで。


「俺達2年の間でも知られてますよ。な、日吉」


この子…でかいけど2年なんだ?


「…さぁ、興味無いな」


あら、私と同じ考えの子かしら?このキノコくん。


「それより、早く名乗ってくれない?」
「…知ってるだろうが、俺が部長の跡部景吾だ。おい、樺地」
「ウス、樺地…です」


跡部の下僕……?


「俺は忍足侑士や」


ああ、やっぱりこの眼鏡か、跡部が言ってたのは。


「俺は向日岳人だぜ」


おかっぱが向日で、


「俺は宍戸亮だ」


帽子が宍戸…。
ん?こいつも跡部が言ってたような…。


「俺は鳳長太郎です。よろしくお願いします」


でかい奴が鳳か…。


「…俺は日吉若」


キノコくんが日吉…。


「そ、大体分かった。私は蓮杖咲乱。必要以上私に関わらないでね」


…私の言葉に、全員が生意気と思っただろう。
ま、変に寄ってこられるより、初めから変な奴と思われた方が気が楽でいいんだけど。

ガチャ…。


「…遅ぇぞ、ジロー」
「んぁ?何で皆揃ってんの」


…何?まだ居るの?


「…マネの紹介してんだよ」
「んー?マネ?」


そう言って私の方へ顔を向けた。


「あ」
「ん?」
「…あんた、金髪男」


こいつ…昼休み後に私に膝枕させた奴だ。


「あー!あん時膝枕してくれた奴か!あはー、あん時はありがとな!」


この呑気さに、少し眉が寄る。


「…名前は?」
「俺?俺は芥川滋郎!」
「私は蓮杖咲乱」


金髪男は芥川…。
それにしても、レギュラーだったんだ…。


「…仕事についてだが」
「それなら結構。ドリンク作りとか洗濯なら別に出来るわ」


前に、嫌というほどやってきたしね。


「何や?転校前んとこでもやってたんか?」


忍足…勘がいいわね。
でも、そんな簡単に私の過去について知られたらたまんないわ。


「…さぁ?過去の事なんて忘れたわ」


私の皮肉な笑みとの言葉に、皆が驚きの表情を浮かべる。
……ま、本当は忘れたくても忘れられないんだけど。


「…レギュラーはさっさと練習に行け」


この空気を見かねたのか、跡部がレギュラーを外へ出す。


「本当に出来るのか?仕事」
「…別に、やったことあるし」
「……そうか」


それだけ言うと、跡部もレギュラー達と練習を始めたようだ。





「…名前、何だったっけ」


思い返すと、あいつ等の中のほとんどの名前が思い浮かばない。


「……まぁ、いっか」


初めから覚える気なんてなかったし。
…さて、仕事……やろうかな。