私の運命を決めるのは貴方じゃない。
私は、私の生き方がある。
それを、決め付けるように言わないで。

たとえ、それが真実になったとしても―――





お母さんが、事故に遭った。



そう知らされたのは、夜の8時頃……。


「嫌だ……っ、こんなの、何かの間違い……っ!」


即死だった。
雨が激しく、窓から外がよく見えなかったらしい。
そして、他の車と衝突―――

私は、お母さんの最後に会うことも出来ず一人ぼっちになってしまった。


「嘘、だよね……っ、お母さん……」


後から車を調べたら、新品の……卒業式用の服が見つかった。
お母さんは、これを急いで私たちに見せようと―――


「……うぅっ…」


窓から外を見ると、忌々しい程の雨と風。
所々、光っているのが見える。


「……やっぱり、あの時無理を言ってでも……」


行かないで。
そう言えば良かった。
そうすれば、お母さんはこんな事には。


「残念だなあ。母親が死んで」


楽しそうに言いながら目の前に現れたのは織。


「……っ織…」
「前まで、お前を守るだの、言ってたのにな?」


まるで、他人事みたいに言う織。


「……な、んで…?織は、悲しくないの……?」
「…はっ、誰が悲しむかよ。…俺は、昔からあんな奴を母親だなんて思った事ねぇよ」


言い放った織の目は、本気だった。
ずっと見られていると、凍りつきそうな―――


「…ひゃっ!?」


大きな雷が鳴った。
私は思わず、目を瞑った。


「……っ」


そして、恐る恐る目を開けると織は、激しい嵐をバックに、微笑んでいた。


「お前は、見捨てられてんだよ。全てに」


そして、両手を広げて、


「……これが現実。お前を守ってくれる奴なんて、いねぇんだよ」


まるで、私の運命を悟っているように言った。


「勿論、俺が居なくてもな―――」


卒業式は、明日だった。
そして、その日を境に織の姿を見る事はなくなった―――





そして、織が言ったように、また私を守ってくれる人はいなくなった。
中3の、私。


「……再会が中3ってわけか…」
「そう。…まるで時を見計らっているように、虐めが起きた頃に帰ってきた……」


過去を思い出すように、空を見た。


「……っ」


何で、空を見るとこんなにも思い出すのだろう。
空に、織が居るから?
今でも、私のことを見ているのかな?


「……もう、帰ろ…?」


答えは出さない。
私は、立ち上がって、倉庫から出た。


「……続きは、また……」


立海の皆が居る時にでも、話したい。
一人では……話す勇気がない。


「…ああ、分かった」


私の気持ちを分かってくれたのか、氷帝全員が頷いた。


こんな人たちに、早く会っていれば、私の運命は変わっていただろうか。