どうして、そこまでこだわる?
真実を、尚も聞き入れない。
そこまで、どうして。

真実は、もう目の前なのに―――





No side



氷帝が出て行った後の沈黙。
初めに口を開いたのは、幸村だった。


「……君たち、何をしているのか分かってるの?」


そう言われた青学は、少しキョトンとしていた。


「……何の事だ、幸村」
「咲乱の事だよ」
「…お前たちは、本当に咲乱が悪いと思っているのか?」
「ああ、そうだ」
「蓮杖が悪いのはもう確定している」


青学全員がそう思ってるかのように、立海を見た。


「……君たちは、知っているだろ?………織の事を」


ピク、
青学は少し顔を歪めた。


「……あんた達…織さんを知ってんスか…?」
「ああ、昔からの幼馴染だからな」
「……だったら、どうして蓮杖の味方なんてしてんスか」
「悪いのは咲乱じゃないからだ」
「…どうしてそう言い切れるんだよ、織は、こ…殺されたのに……」


菊丸が、少し俯いて言う。


「……それは、大きな間違いだ、菊丸」


柳が言葉を否定する。


「…っ、じゃあ、どうして織が死んだってんだよ!ほんとに……良い奴だったのに!」
「あんた達が、織さんと咲乱さんの何を知ってんスか」


赤也が、恨みを込めた目で青学を睨んだ。
そうだ……青学は、二人の上辺だけの関係しか知らない。


「……織は、テニスが好きで、仲間思いで……、あんな奴でも妹だ、と言っていた……」
「心の優しい奴だったよ、織は」
「……完全に、織という人物を誤解しとるな、お前さんら」


仁王が呆れたように呟いた。


「…じゃあ、青学の皆さんにお聞きします。織くんは、本当に咲乱さんの事を大切に思っていたのですか?」
「……ああ、たとえ愛美を虐めてても、妹だって言っていた」
「だから、織も蓮杖に厳しく言っていた」
「……どうして、でしょうね」
「……何が言いたい、柳生」
「妹として大切にしているなら、普通、妹を守るのが兄ではありませんか?」
「「「……!」」」
「それなのに、どうして織くんは咲乱さんを守らなかったのでしょう」


柳生の言葉に、全員何も言えなかった。


「……まだ、認めないか……。ならば、少し話してやろう」


そして、語り始めた……。


「織は…………小さい頃から咲乱を嫌っていた」
「虐め……してたんだぜぃ?」
「……嘘を言うな」
「何で嘘って決め付けるんだよ!」
「……織さんは、そんな事するような人じゃねぇ…」
「お前に、織という人物の何を知っている?」
「…何も知らねぇくせに、咲乱さんの事傷つけてんじゃねぇッスよ…!」
「……それとこれは関係ないだろう」
「関係あるんじゃよ、それが」
「……お前たちも、見ただろう?咲乱と織が再会した時」
「お前たちに虐められるようになってから、転校してきただろう?織が」
「……それがどうしたんだよ」
「その時の、咲乱の様子、覚えていないか?」


青学での事は、何度も咲乱に相談されていた立海。


「「「………」」」


思い出しているのか、沈黙になる青学。


「……めちゃくちゃ、怯えてただろぃ……?」


丸井の言葉に、青学が顔を伏せた―――


「………もう、いいよ。こんなバカバカしい話」


鋭い口調で踵を返したのは不二。


「っ、不二、逃げんのかよ!」
「……逃げる?違うよ。…これ以上、付き合ってられないだけ」


冷たく見て、黙々と自分の部屋に戻った。


「……俺たちも、失礼させてもらう」
「っ、あんた達…!」
「現実を見ろ!」
「…俺たち、もうこんな話したくないんだよ」
「……もう、突っかからないでくれ」


次々と帰っていき、最後に残ったのは桃城と菊丸。


「……お前ら…何が…」
「……どうして、そこまであの女を……?」


問いかけた。
でも、答えは帰ってこなかった。


「……悪いッスけど、何を言われても俺たちは変わりませんから」
「咲乱の事をよく知っているのは立海かもしれないけど……俺たちは、もう変われないんだ」


そう言って、二人も戻った。
立海は何も言えず、ただ二人の背中を見つめるばかりだった。