貴方は、
私の興味を惹いてくれる……―――?





次の日に起きたのは昼。
学校では丁度昼休み前だろう。


「あー…行くか」


午前の授業なんてかったるいことこの上ない。
とりあえず支度をして学校へ向かった。
だが、勿論教室になんか行く気は無く、昼休みでも来る人はあまり居ない。
…それに、私の居場所。
ここは日当たりもいいし、寝転がると気持ちいい。


「あぁ…雲はいいわね…」


綺麗な青色の世界を、純白の姿で自由に流れてられるんだもの。
雲は汚れを知らない。
そう、私とはまるで正反対…。


「太陽も、輝いてる」


太陽も同じ。
空で一人、輝いている。
太陽は闇を知らない。
自分の光で、ずっと輝く場所に居られる。
闇しか知らない、闇にしか居られない、私とは大違い。


「…こんな所に居たのかよ」
「……跡部」


急に光を遮ったと思ったら、跡部が私の前に立っていた。


「…ずっとここに居たのかよ」
「いや、今来たばっか」


起き上がりながら言うと、跡部も私の横に座って、


「…監督には話してある。お前が来なかったら意味ねぇだろ」
「授業なんて面倒なだけよ」
「はっ、宍戸と同じこと言ってやがる」
「……宍戸?知らない奴と同じにしないでくれる?」
「これから分かるようになる。そいつはテニス部レギュラーだからな」
「…ふーん」


ま、会って見ないと興味なんか沸かないからどうでもいいわ。


「ねぇ、私のクラスにあんた以外のレギュラーって居るの?」
「居るぜ、忍足って奴が」
「……知らないわ」
「お前、もうちょっと周り見ろよ」
「私の興味を惹かないんだからしょうがないわよ」
「あれでも俺様の次くらいに人気だぜ?」


あんたを基準にして考えないでよ。


「あんたの人気なんて知らないし」


ま、少し喋っただけで呼び出しがあるのは分かったけど。


「…生意気な奴」
「今に知った事じゃないでしょ」


…ま、あんたと居ると妙に素が出せるけどね。
って言っても、いつもの自分がほとんど素なんだけど。


「まぁな。…俺は午後の授業に出るが、お前はどうする?」
「出るわけないでしょ。もうちょっと寝てる」
「そうか…じゃ、放課後になったら呼びに来るぜ」
「結構。あんたと一緒に歩いたら目立つ。…別に部室くらい分かるわよ」
「…ならいいが」


そう言って跡部は去っていった。


「…はぁ、喋ったら疲れた」


そういえば、昨日といい、こんなに人と喋ったのは久しぶりかも。

ガチャ…。


「ん?誰…」


ドアの方を見ると金髪の男。


「ふぁ〜あ…、ん?誰だ…?」
「それはこっちの台詞よ。あんたは誰?」
「ねぇー、膝枕してくんない?」


そんなことより、私の質問に答えてよ。
ていうか、馴れ馴れしすぎる…。


「やだ。何で私があんたなんかに膝枕しなきゃいけないのよ」
「Aーそんなこと言わずにさー」
「あ、ちょっと…!」


金髪男は勝手に私の膝を枕にして寝た。
…はぁ、人の話を聞けっての。
寝顔が無防備…私の事なんか知らないくせに、どうして自分の身を預けられるのかしら?


「……地獄を知らない顔ね」


そう、まるで天使みたいな寝顔。
そういうのは、嫌いじゃない。
でも、私には絶対出来ない。
地獄を知ってしまったから。


「…しょうがない。…今日だけよ」


私もフェンスにもたれて寝ることにした。