昔からそうだった。
天気の悪い日に限って、いつも。

地に雨が落ちるように。

私にも、何かが―――





朝……。
合宿、残り3日。
……もう、半分が過ぎたんだ。
その間……何か変わったかな?

ううん。
何も変わってない。

――――どうしてこうなったんだろう。

最近、思い始めた。
でも、なるべく考えないように、封じ込めてる。


「…………今日は、天気悪い…」


こんな日は、大嫌いよ―――





「咲乱さん!おはようッス」
「おはよう、赤也」
「少し遅かったな。どうしたんだ?」
「……少し、気分が乗らなかっただけよ」
「……おはようッス…」
「おはよう、リョーマ」


どうしたんだろう…。
いつもより、帽子を深く被っててリョーマの顔が見えない。


「咲乱、早く行くぞ」
「あ、うん……。あ、そうだ」
「アーン?何だ」
「……今日、話があるから、午前の練習が終わったら部屋に集まって」
「……ああ、分かった」


もう、残りの時間は少ないから……。
私はそれだけ言うと、コートへ向かった。

コートへ行く途中も、天気の悪さが凄く気になった。





「ふぁ〜〜あ」
「……随分遅い登場ね」


丁度、ドリンクを作り終えた頃。
愛美がやってきた。


「いいじゃない、別に。どうせあんたしか仕事しないんだから」


そう言って、髪をいじる。


「はぁ、天気が悪いと憂鬱だわ〜…」


窓から空を見た。
まるで、私たちを覆うように雲が広がっている。


「どうせなら、雨でも降って練習中止になればいいのに」


曇り空を睨むようにして愛美は言う。
……練習をサポートしなければならない立場にあるマネージャーの言うコトじゃないわ。


「あ、そぉだぁ〜。確か、ボールが少なくなってきたから取りに行ってくるように頼まれてたんだぁ」


言って、ちら、と私を見る。
こういう時は、


「あんた、取ってきてくれるよね?」


いつも私の仕事……。


「………」


青学でも、こんなことはいつもだった。
私はドリンクを注ぐのを終えると、倉庫がある場所へと向かった。



「……バイバイ、咲乱」


部屋で一人、愛美が笑みを浮かべてるのを知らずに―――



「えっと……ここ、だっけ」


宿舎の裏手。
そこに、倉庫があった。


「はぁ…。一人でボールの箱…か」


少し辛いかもしれない。
でも、やらなきゃいけない。
ボールが少なくなってるのは確かだもの。
氷帝や、立海の皆に楽しくテニスをして欲しい……。
テニスをしている間くらいは、私のことを忘れて……。
本来なら、青学とも良いライバルなんだもの。


「えっと…………………あ、あった」


倉庫の奥。
倉庫に足を踏み入れ、ボールの箱に触れた瞬間。

バタンッ。


「!?なっ……!」



私は暗闇に覆われた―――