本当に、俺の言いたいこと分かるの?
ちゃんと、聞いてよ。

また、傷つかないように―――





越前side



おかしいっ、おかしい……。
どうして、桃先輩は……!
っ、咲乱先輩っ―――


「咲乱先輩っ」


俺は、ドアをノックしながら呼んだ。


「……リョーマ?こんな時間にどうしたの?」


言葉と同時に、ドアが開いた。
そして、俺はすぐに部屋に駆け込んだ。


「?リョーマ…」
「咲乱…先輩…」


話したい事が、沢山ある。
話さなきゃいけない事が、沢山ある。


「っ、どうして、桃先輩は…っ」
「…え…?」
「なんで……っ」
「……リョーマ?」


咲乱先輩が、俺の肩を掴んだ。


「桃先輩はっ、気付いたのに…!」


それなのにっ―――


「このままじゃっ、咲乱先輩が傷つくだけ……っ!」


もう、傷ついて欲しくない。
もうたくさんだ。
俺はこの人に……幸せになって欲しいんだ。


「桃先輩は……いや、青学の皆は……っ」
「リョーマ」
「……っ」


咲乱先輩が、落ち着いた、優しい声で俺の名前を呼んだ。


「……分かってる。リョーマの言いたい事」


え……。


「青学の皆は、本当に愛美の事を大切にしている」


真っ直ぐに俺を見て言う。
俺を、落ち着かせようとしているんだと思う。
でも、その所為で。
咲乱先輩の感情。
表情から分かるッスよ―――


「……あれだけの事があったんだもの。……自分のした事が、認められないのよ」


………違う。
桃先輩は、冷静だった。
冷静に、藤堂先輩を守るって……。


「だから、ね。リョーマは気にしなくていいの」


咲乱先輩は、俺の肩から手を離した。


「……ほら、もうこんな時間。…確か、桃城と同室だったわね?居辛かったら、跡部の所にでも……」
「咲乱先輩…」
「まだ、明日があるの。……だから、早く……」


咲乱先輩の目が、俺から逸れた。
その咲乱先輩の表情に、俺は何も言えなかった。


「………」


そうして俺は、部屋から出た。
そして、咲乱先輩の言ったとおり、今は部屋に居づらかったから、隣の跡部さんの部屋に泊まる事にした。


また、明日。
何かが起こる―――