分かるんだよ。
道が違うって事は。

でも、だめなんだ。

一度進んだ道は
突き当たりが見えるまで
終わらない―――





桃城side



もう、遅い。
今更気付いたって、遅いんだ。


「…どうしてっ?気付いたんスよね?」


越前が、眉を寄せて俺に聞いた。


「……ドリンクは、咲乱先輩が作ったんだろ?」
「そうッスよ。…だから、」
「それ、だけだよな」
「!?」


ドリンクの味、あれは絶対に咲乱先輩のだった。
……忘れもしない。

「こんな不味いドリンク、いらねぇよ!」

何回も浴びせた罵声。
でも、

そう思ったことは、一度も無かった。


「っ、桃先輩……?」
「でも、咲乱先輩が愛美先輩を傷つけたことは、事実だ……っ」


そう、事実。
こうでも考えなきゃ、俺は。


「桃、先輩っ」
「織さんを殺した事には、変わりねぇんだよな……」


もう、思い込むしかねぇんだよ。
俺たちは……後戻りできない。


「愛美先輩は、悪くない―――」


いつから、こうなったのか。


「悪いのは、咲乱先輩―――」


あの頃の俺たちは、もう居ない。


「……っ」


越前は、走り出した。
……咲乱先輩の部屋に向かって。


「………」


俺は決心したんだ。
もう揺すられない。
感情的にならない。
道をはずさない。

守るべき人は――――――愛美先輩だっ。


「―――桃」
「っ!?……不二先輩」
「どうしたの?こんなところで」
「……いや、少しうろついてただけッスよ」
「そう?……ほら、もう遅いよ。眠ったら?」
「……そうッスね」


俺は振り返り、部屋に戻ろうとした。


「……桃」
「…?何ッスか?」

「……よく、逃げなかったね」

「!!」
「……また、明日」


その時の、不二先輩の不敵な笑みには気付かず―――

俺の頭の中では
何が真実で
何が正しくて
どこから始まって
どこからおかしくなって
誰から狂い始めて
誰から信じられなくなったのか

分からない―――