人は、
つくりものじゃない。
人形じゃない。

ちゃんと、感情をもっている―――





練習中は特に何も無かった。
愛美も何もしなかった。
ただ、私と二人で居るときは、何かを考え込んでるみたいに表情が暗かった。
そのことを不審には思ったけど…その時は特に何も考えなかった。

でも夕飯の時はいつもの調子に戻っていた。
青学は愛美を中心に話していて。
私たちも、楽しく夕飯を食べた。

そして、部屋に戻った。
一人、これからについて考えていた。
明日で合宿4日目。
後、3日しかない。
その間、私は全てを話さなければならない。
何から話せばいいか。
未だに分からない。


「……はぁ。大丈夫かな、私……」


気付くと、口から弱音が出ていた。
でも


「……一人の時くらい、いいよね」


じゃないと、本当に壊れてしまう。
人は、完璧じゃないから。
ゆっくり息を吐き出して
目を閉じて
思い浮かぶのは、過去じゃない。
氷帝、立海の人の顔。
辛かった過去が、段々と奥に眠り始めてる。

だからって、消える事はないけれど。
せめて、今だけ。
氷帝と立海の皆の顔だけを思い出させて。

時には笑って励まして
時には真剣に考えて
時には私の為に怒ってくれて
時には一緒に悲しんでくれた。
そんな皆の顔が鮮明に思い浮かぶ。
何だか少しだけ、気が楽になった―――

今、貴女は何を考えていますか?
今、貴方は何を考えていますか?
今、貴方たちは何を考えていますか?

過去?
現実?
未来?

どれにしても
私の事じゃなければいい―――