関わった以上、

『知りたい』 じゃ済まされない……―――





向日side



………何で俺達は蓮杖と昼飯食ってんだ?
ああ、全ては跡部の一言から始まったんだ……。





「屋上に行くぞ」


…は?何で屋上なんだ?


「…何で屋上なん?」


俺が思った事と同じ事を侑士が言った。


「…いいから来い」
「「「……?」」」


皆不思議に思いながらも屋上に行くと、


「…蓮杖?」


そう、蓮杖が居たんだ。
会った瞬間、すげぇ面倒そうに眉を寄せた。
そうしたいのはこっちだっつの。


「…あ、ジロー」
「んー…?あれ?皆…?」
「お前、何してたんだ?」
「咲乱と寝てたC!」


……咲乱?
いつからこいつの事、名前で呼ぶようになったんだ?


「…あんた達、どうしてここに?」
「…それはこっちが聞きたいわ」
「ここは私がいつも居る場所よ」


…いつもここで授業サボってんのか?


「俺達は跡部さんに連れられて来たんですよ」
「……どういうつもり?跡部」


声から、蓮杖が不機嫌だという事が分かる。


「アーン?別にいいだろ」


おいおい…もっと不機嫌になんだろ、んな事言ったら。


「…そうね、別にいいわ」


…いいのかよっ!


「何ー?皆でご飯?よーし、食べよー食べよー!」


…ジローのおかげで空気が少し軽くなったぜ…。





こうして今に至る。
はあ、何か気まずい…。


「………」


蓮杖は当たり前に無言だしよ…。


「…咲乱、あれから何もねぇか?」


は?
跡部も名前呼びかよ!


「無い方がおかしいんじゃない?」
「…何があった?」


跡部が問うと、蓮杖はポケットから一枚の手紙を取り出した。


「…あんた達のことが大好きなファンからのお呼び出し」


おいおい…呼び出しって…。


「……行くなよ」
「面倒だけど、呼び出されたら行くのが礼儀でしょ?」


…変なとこで礼儀正しいな。
いや、礼儀正しいっつーより……素直。


「…そうか」
「…大丈夫、慣れてるから」


…慣れてる?
何で、んなのに慣れてんだ?


「…一体、何があったんだ?」
「「「………」」」


俺の言葉に皆が黙る。


「…俺も、知りたいです」


皆の視線が蓮杖に集まる。
蓮杖が一瞬俺を睨んだ気がした。


「…知って、何になるの?」


そしてゆっくり口を開いた。


「あんた達が、私のことを知って何か出来るの?」
「…そんなん、分からんやんか」
「いいえ、分かるわ。知っても何も出来ない」


どうして…こんなに言い切れるんだ?


「…でも、知りたい」


俺は無意識に口に出していた。


「そんな興味半分で知りたいなんて言わないで」
「……っ」


だが、すぐに図星を突かれた。
俺は、ただ知りたいと思ってるだけなんだ。


「私は…本当に信用出来る人しか話さない」
「…そんなの、俺がさせてやるよ」
「……無理よ。…私は、もう誰も信用しない。……もう、あんな思いはしない…」


最後は小声で言ったが、皆聞こえたと思う。


「…分かったなら、必要以上に近づかないで。余計、面倒な事になるだけ」


…それは、呼び出しの事なんだろうな。
蓮杖はそれ以上何も言わず、荷物を持ってこの場から去った。



「……何なんだ?」
「あぁ…ほんま、過去に何があったんや?」
「…何か、とても、忘れられないような出来事でしょうか」
「跡部、お前、分かんねぇのか?」
「……分からねぇ」


跡部でも分かんねぇんだ…。
ほんと、一体何があるんだよ…?


そうして彼等は彼女に惹かれてゆく……―――。